03
村田俊哉はその日も一人で弁当を食べていた。
決して友達がいないというわけではない。だが、ヒエラルキーの下層部にいる彼は、クラスになかなか溶け込めずにいた。
自己紹介の時にヲタ芸を披露したのがまずかったのだろうと、本人も自覚はしている。
だがまだいじめられるグループに入れられないだけ、ましだと思っていた。
ヒエラルキーでは下層部にいるが、上層部、中層部の人たちからいじめを受けているのは、大抵、最下層に位置する人たちであった。
あそこにはよっぽどのことがない限り、属されることはない。
ヘマをしないように、地味に学校生活を過ごすことが、彼に与えられた試練であった。
好物のミートボールを口にしていると、廊下から歓声が聞こえてきた。
何事かと思い、入り口を見ると、木村太輔が教室に入ってきただけであった。
全てにおいて完璧だと評されている彼は、何をしても歓声が沸き起こる。
幼稚園の頃からの幼馴染の俊哉からしては、すごく憧れを抱き、誇れる存在でもあった。
そんな彼のもとにクラスの女王、中井りかが近づく。
彼らは付き合っているわけではないが、お互いヒエラルキーの頂点に立つ者同士、お似合いの二人だと周りからも言われていた。
「太輔くん、今日も一緒にお昼食べよ?」
「ん、ああ。いいけど」
「今日ね、りか、お弁当作ってきたの」
人気者の二人の周りには、いつも人だかりができている。
俊哉はその光景に圧倒されながら、弁当を一人食べ進めていた。