第一章『絶対命令』
03
村田俊哉はその日も一人で弁当を食べていた。

決して友達がいないというわけではない。だが、ヒエラルキーの下層部にいる彼は、クラスになかなか溶け込めずにいた。

自己紹介の時にヲタ芸を披露したのがまずかったのだろうと、本人も自覚はしている。

だがまだいじめられるグループに入れられないだけ、ましだと思っていた。

ヒエラルキーでは下層部にいるが、上層部、中層部の人たちからいじめを受けているのは、大抵、最下層に位置する人たちであった。

あそこにはよっぽどのことがない限り、属されることはない。

ヘマをしないように、地味に学校生活を過ごすことが、彼に与えられた試練であった。

好物のミートボールを口にしていると、廊下から歓声が聞こえてきた。

何事かと思い、入り口を見ると、木村太輔が教室に入ってきただけであった。

全てにおいて完璧だと評されている彼は、何をしても歓声が沸き起こる。

幼稚園の頃からの幼馴染の俊哉からしては、すごく憧れを抱き、誇れる存在でもあった。

そんな彼のもとにクラスの女王、中井りかが近づく。

彼らは付き合っているわけではないが、お互いヒエラルキーの頂点に立つ者同士、お似合いの二人だと周りからも言われていた。


「太輔くん、今日も一緒にお昼食べよ?」

「ん、ああ。いいけど」

「今日ね、りか、お弁当作ってきたの」


人気者の二人の周りには、いつも人だかりができている。

俊哉はその光景に圧倒されながら、弁当を一人食べ進めていた。

■筆者メッセージ
えー、男性陣の名前は中井さんが昔好きだったアイドルから来ています(笑)
黒瀬リュウ ( 2017/06/25(日) 12:00 )