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話を聞いてくれる。村田の優しさに甘え、連れてこられたのは、人気の少ない通りにある小さなアパートだった。
中井はこれまでこのような所に来たことは一度もなく、警戒心よりも好奇心のほうが先に来ており、キラキラと輝かせた目で、辺りを見渡していた。
「すごいわね。こういうの漫画とかでしか見たことない!あんた、こんなボロっちい家に住んでるの?」
部屋の中を進むと、つい最近まで誰かが住んでいたような痕跡があった。
何も知らない彼女は土足で部屋の中を歩いていく。
村田はポケットからハンカチを取り出すと、それを彼女の顔の前にそっと持っていき、ハンカチに染み込ませていたクロロホルムの匂いを中井に嗅がせた。
彼女の意識はふっと闇の中へと落ちていき、倒れていく体を支えた村田はボソッと呟いた。
「太輔、お前の恨みは俺が晴らす・・・」
親友がつい最近まで暮らしていたこの家で、村田の復讐心は強く燃え上っていった。