06
竜三がアパートに戻ると、杏奈が待ち焦がれていた章一がいた。先に帰っていた栄介や由依も、あまりその事には触れずいた。
「祭、行こっか」
自分のせいで重い空気になってしまっていると察した章一は、笑顔を振り撒いて立ち上がり、皆を急かし立てて七夕祭り会場へ向かった。
四人は祭に来た人気の演芸芸人のショーを見ていた。
そこには数百人を超える町の人間が集まっており、子供から大人まで声を出して笑っていた。
ふと栄介が章一を見ると、彼の心はここにあらずと言ったように、上の空でぼおっとしていた。
「杏奈ちゃん、フッちゃったんだ」
「・・・、今の俺にはさ、時間と金の無駄じゃない。そういうのって」
あんなにも仲の良かった二人なのに、彼がここまで話すということは何かあったのだろうと栄助は察したのだが、それが何かを尋ねる勇気はなかった。
視線を外すと、浴衣だらけの会場の中で、明らかに一人だけ浮いている格好をした女性を見つけた。
高そうなドレスを身に纏った、白石麻衣だった。