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こうして四人の夏は本格的な制作活動に注ぎ込まれることになった。好きなことを好きなだけ、余計なことを一切考えることなく『自由』を追い求める夏が始まったのだ。
栄介は長らく温めていた児童漫画に取り組み、由依は以前出会った達郎という男の似顔絵をもとに、彼の肖像画を出会った池のほとりで書いていた。いつかまた、彼に会えることを祈りながら。
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その帰り、由依はいりやまに立ち寄り、丼ぶりと箸を貰いに来た。これから自炊を始めるということを杏奈に伝えると、快く引き受けてくれ、使わなくなった丼ぶりを四つほどもらえることになったのだ。
「お待たせ、はい、これ」
「あっ、悪いね。ありがとう」
軽く頭を下げ、由依が帰ろうとすると、杏奈が彼女を呼び止めた。
「ねえ、由依ちゃん。あのさ、章ちゃん、なんか言ってなかった?」
「いや、何にも言ってないけど」
「そう」
少し俯きがちな彼女が気になり、由依は尋ねた。
「なんかあったの?」
「う、ううん。別にそういうわけじゃないんだけど・・・」
「なんかあるんだったら、伝えとくけど?」
彼女のその言葉に杏奈は少し考えながらも、甘えさせてもらうことにした。