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「じゃあ九月までのお小遣い、一人五千円ずつね」
四人は相談しあった結果、まとまった金が手元にあると、誰かが使いかねないということで、第三者に預けることにした。一番彼らにとって身近な存在といえば、行きつけの喫茶店、NEW SHIPのマスター、林田であった。
「二万九千五百円。預かるのはいいけれど、これで九月までやっていけるの?」
「家賃も三か月先払いしたし、光熱費とか水道代とかもちゃんと引きましたし」
「あっ、ここのコーヒー代もちゃんと払えまっせ」
「そっか、なら安心だね」
「よし、早速ですが今日の食費として四百円いただきますね」
栄介はテーブルの上に置かれてある小銭を取った。その様子を見ていた林田は煙草を吸いながら、彼らに尋ねた。
「自炊するっていうからには、米味噌ぐらいはかってあるんだろうね?」
林田の言葉に四人は固まったように動かなくなってしまった。そんな彼らを見た榛香はくすくすと笑っていた。
「ええっ、買ってないの?何食べるつもり、君ら」
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大事なことをすっかり忘れていた彼らは、NEW SHIPを後にし、祐二が働く岩田商店に足を運んだ。
「じゅ、十キロ千五十円・・・!?」
「小遣いの中から出し合わせて買うしかないね・・・」
しかしそれで九月まで持つかといわれると、どうすることもできない。困った彼らは店の前で立ち尽くしていると、中の店員たちから冷たい視線を向けられていることに気付いた。
明らかに冷やかしは帰れという無言のメッセージだった。
「あとで・・・また来よう・・・」
店の前から彼らが立ち去った後、ちょうど入れ違いで祐二が配達を終えて帰ってきた。
とぼとぼと歩く四人の背中を見つけた祐二は、心配そうにその背中を見つめていた。