04
四人はそのあと、売り払った服やギターなどすべて買い戻し、駅前のおでんの屋台にて酒を酌み交わしていた。
「いやあ、せやけど大したもんやなぁ。ゴッホは生きとる間、一枚も絵が売れへんかったんやってなぁ。言うてみたら君は、ゴッホを超えたっちゅうことちゃうんか?」
竜三の言葉に由依は嬉しそうにしながら、並々と注がれた日本酒をぐっと飲んだ。
「いやいや、彼と私とでは絵のタッチが全然違いますから」
そう言いながらも、終始笑みが止まらない由依の姿を見て、他の二人も笑顔がこぼれていた。
竜三の隣に座っていた山岸はコップの中に入った酒を一気に飲みきると、代金をテーブルの上において、立ちあがった。
「よし、じゃあ俺は行くぞ」
「ああ、先輩、おおきに。ありがとはんでした」
「おう」と返事をして駅へと向かっていく山岸の後ろ姿を三人は見送ったが、章一はどうしても気になることが一つあった。
いてもたってもいられなくなった彼は、山岸の後を追い、駅のホームへと向かった。
途中、切符を持っていないことに駅員に注意されたが、すぐに戻るとだけ伝え、少しの間だけ中に入れてもらうことができた。
ホームの真ん中でベンチにふんぞり返って座っている山岸を見つけると、彼の名を呼んで、彼のもとへと向かった。
「山岸さん」
「おう、君はさっきの」
「すいません、あの絵、どこの画商が買ったのか教えてもらってもいいですか?」
「それを聞いてどうするね」
「いや・・・、その・・・」
返す言葉に困っていると、彼は懐から一枚の紙を章一に手渡した。
そこに記された文字を見て、章一は愕然としたと同時に、やっぱりという思いが心によぎっていた。