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同じ頃、章一はパチンコを打っていた。昔からパチンコでは負けたことがなく、この日も次々に当たりを出していた。
「おばさん!おばさん!」
「駄目よ、台を叩かないで」
「ここ球が詰まってんだよ。早く出してよ!」
当時のパチンコは現在のものとは大きく異なり、降りてきた球を裏から補充するという裏方という存在があり、手作業で行うものがほとんどであった。
そのため、章一の隣でパチンコを打つ客のように、球が詰まったときは、裏方の従業員に出してもらうよう頼むしかないのである。
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その夜、閉店作業を行っていた杏奈のもとに来客があった。パチンコで儲けた金でパンやお菓子などを大量に買ってやってきた章一である。
彼はそっと店のドアを開けると、厨房の奥で包丁を研いでいた大介に睨まれながら、杏奈を手招きして店の外に連れ出した。
「どうしたの?ってか、すごい買い物ね」
「あっ、いや、パチンコでね・・・。それよりも、明日定休日だろ?」
「うん。そうだけど」
「・・・デート、しない?」
彼の言葉に一瞬「えっ」と驚いたが、彼女はすぐに笑顔を見せ「嬉しい」と答えた。