第一章:大都会東京
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 村岡の呼びかけに集まったのは三人。よく集まったものだと自分でもびっくりだった。
「じゃあ、各々準備よろしく」
 村岡のその一言で四人は二人ずつに分かれ、行動を開始した。
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 肉そばを食べ終わり、そろそろ帰ろうかと思っていると、隣でかつ丼を食べていた女性が玉のような汗をかいていることに気付いた。ベレー帽をかぶった彼女はまるでこの世の終わりを察したかのような表情を浮かべ、額からだらだらと汗を流している。村岡は彼女の様子を見て、一瞬で何があったのかを察した。そしてこれから彼女が取ろうとしている行動も。ベレー帽の女性はそっと立ち上がり、何事も無かったかのように店から出ようとした。しかし世の中甘くいくことはなく、店主の大介に見つかってしまった。
「お客さん、お勘定は」
「えっ、えっと・・・」
「まさか、払えないわけじゃないよな?」
「いや、その・・・」
 彼女は食い逃げをするのがこれが初めてだなと村岡は予想した。もっとうまく撒く方法があるのだが、彼女の今後のためにもそれは教えないで上げたほうがよさそうだと彼は思った。実は村岡自身も金に困ると食い逃げをしたことが何度かある。しかも、この食堂いりやまでだ。それでもここに通えているのは、きちんと金の準備ができるとここに支払いに戻ってきているからだ。村岡の中で、これは食い逃げではない、ツケなのだと何度も自分で言い聞かせていた。再びベレー帽の女性を見ると、彼女はもう涙目になってどうしようもなくなっていた。
 ふとそのとき、村岡の頭に一つの案が閃いた。それは彼女を助ける一番の良案で、なおかつ自分にとっても得をする最高の案であった。

黒瀬リュウ ( 2016/06/26(日) 22:47 )