2話
ピンポーン
「零斗〜!」
先程からインターホンを鳴らしては自分の名を大声で呼ばれている。少し恥ずかしい気もしたがまたせてしまっていることに変わりはないので零斗は急いで支度をした。
「悪い待たせたな」
「も〜おそいよ何してたの?」
「髪の毛セットしてた。……ってそれお前にいうことか?」
「勿論」
「おい優子待て」
零斗は歩いていこうとする優子を引き止めた。
「なに?」
「バイク乗るか?」
中学の時に年をごまかして取得した免許があったためバイクには乗ることはできた。
のだが二人乗りは人生初のためかなりおぼつかない。これには優子も不安を覚える。
「え、零斗大丈夫なの?」
「大丈夫」
と、いいつつも変に冷たい汗が頬を流れる。
やっとのことで到着した2人はカラオケ店に入っていった。
「みんな遅れてごめーん。零斗がたらたらしててさ」
「運転が下手で悪かったな」
「ところで優子ちゃんそこのイケメンくんの名前はなんていうん?」
関西混じりの子がストローで啜りながら言う。
「松井零斗よろしく」
「ウチは渡辺美優紀」
優子ではなく零斗が答えた。すると美優紀が笑った。不覚にもドキッとしてしまう。
「松井!俺は三河光矢あだ名はサイダー」
「よろしくサイダー」
光矢のあだ名がサイダーなのは言うまでもなく三ツ矢サイダーからだろう。
「あとみるきーは釣り師って言われてるほどモテるんだよ」
耳元で周りの人には聞こえないくらいの声で光矢は言った。のだが
「なんか言った?」
「い、いや別にみるきーって相変わらず可愛いよなって」
光矢は尋常じゃない量の汗をかいていた。
「あ、零斗君私はクラスメイトの指原莉乃です。イケメン大好きっす」
「指原グイグイ来るねぇ」
「いやぁイケメン君なんで指原は興奮してるのです」
「私は2組の北原里英です。よろしくお願いします。北りえと呼んでください」
「よろしくきたりえ」
里英までは優子の知り合いだったが後の数名はみるきーや里英が知り合ったクラスメイトであったのだが1人知っているやつがいた。
「はいはい松井珠里奈です。お兄ちゃんとは双子の関係です」
「そうなんだ〜」
開いた口がふさがらない。これは3年間隠し通す気でいた。とはいってもいつかはバレてしまうことだ。それにしてもこんな早い段階でバレるとは計算ミスだ。
「零斗は珠理奈とは仲がいいの?」
「仲?良くな「一緒に寝てるよ」
「お前は嘘いうな!いつ寝たんだ?」
訳のわからないことをいう珠理奈に零斗は問う。二人は別々の部屋で寝ている。
「毎日だよ」
「は?」
「お兄ちゃん寝るの早いから寝た後にそっと忍び込んでるよ」
何やってんだコイツ
零斗含めほとんどの人が思った。
のだが指原、光矢はいいなと思っていた。
「あの……自己紹介いいですか」
「いいよ」
珠理奈の暴露が終わると清楚系な女の子が口を開いた。
「島崎遥香です」
「よろしく。松井零斗です」
「何でれでれしてんの零斗?
「してないわ!」
やばい…恥ずかしい……
実のところ興奮してるのは遥香のほうだった。中学の時に不良に絡まれたことがあった。その時本当に偶々歩いてきた零斗が助けてくれたのだった。零斗の名前は零斗がその時教えてくれたのでわかっていたのだが肝心の自分の名前を教えるのを忘れていたのだった。まさかまた合うことができるとは思ってもいなかった。
「あれ?遥香ちゃんどこかで会ったよね」
遥香がビクビクと反応した。したを向いて顔を 見せていないが真っ赤になっている。
覚えてくれていた。
それだけで嬉しかった。
「は、はい…中学の時に不良に絡まれてて」
「あ、そうだその時だね。名前聞くの忘れてたから」
零斗は無邪気に笑った。恥ずかしすぎて零斗を直視できない。
立ち上がったら今にも倒れてしまいそうだ。
遥香はあの時以来ずっと零斗が好きだったのだ。