第四十一話
藪下が病院に運ばれてから2時間がたった。
霊大、渡辺、近藤、矢倉そしてこの事を聞いた山本、山田、吉田、明日の仕事のために前乗りしていた兼任の市川が劇場で待機していた。
「彩ちゃん用事大丈夫なん?」
重い空気を破ったのは渡辺だった。
「柊がこんなんなってる時にそんなこと言うてられへんよ。」
「さすがさや姉やな。頼もしいわ。」
独特な声で話しているのは山田だった。
「ほんとさや姉はかっこいい〜」
気の抜けた声は市川だった。
他にもメンバーが思い思いに喋っている。みんな不安なのは同じなのだろう。
「なぁ…」
霊大は口を開いた。
「どしたん?」
渡辺が反応した。
「山田と市川ってさどっから声出してんの?」
・・・・・
メンバーは喋るのをやめ、ポカンとした顔で霊大を見ていた。
「霊大さん…?何言うてるん…?」
「いや…単純に不思議で…え?俺なんか変なこと聞いた?」
霊大は全員に見られて少し後ろに下がった。
「…ぷっ! あはははは!!霊大君最高やわ!」
渡辺が笑い出すと他のメンバーもつられて笑い出す。
「…?」
霊大は自分が面白いことを言ったのかと首をかしげる。
「やっぱ誰が聞いても変なんやって!」
渡辺の横にいた吉田が言う。
「うーるーさーいー!そんなことないしー!」
「いやいや十分やで?」
矢倉も笑っている。
「あ!ふぅちゃんまで!ひどいわー…」
「ちょっとみんな…柊がこんなんなってる時に笑っててええの?」
近藤が悲しそうな顔をしている。
「あ…」
その一言にメンバーが沈む。
「でもな。やっぱり笑顔の方がみんなに似合ってるし、笑ってた方がいい事が起きるかもしれないだろ?」
「そや! 湿っぽいのはうちららしくないし!柊もその方が助かるかもしれんやん!」
山本が近藤に問いかけた。
「そうやね…みんなで信じて待ちましょう!」
「うん!やっぱりぃちゃんは笑顔が似合うわ〜」
渡辺が近藤の頬をつついていた。
(まったく…藪下はいつ死ぬんだよ…)
(それに山本。そうやって笑ってるのも今のうちやで…ふふっ。)
山本に迫る影が徐々に迫っていた。