第四十話
その後チームBII公演が始まった。霊大の隣には渡辺、そして渡辺が呼んだ近藤とたまたま来ていた矢倉が座っていた。
「あの子が藪下柊ちゃん。BIIを引っ張ってる子やな。んで、あの子が上枝恵美加ちゃん。キャプテンやな。」
「へぇ〜」
渡辺はそれからも丁寧に教えてくれた。そのおかげか少しメンバーのことを知れた。
「あ、うーかやで! うーーかーーー!!」
渡辺が加藤を見つけたのか加藤に向けて声援を送っている。それに気づいたのか加藤は渡辺に手を振り、その横の俺にウインクをした。
「あ! 今うーかからウインクもらったやんな!?えーなー羨ましいー!」
その後も加藤は事あるごとに霊大にウインクしてきた。その度に渡辺が怒っていた。
公演も終盤に差し掛かり、MCをしていた。ステージには藪下、加藤、上枝、室、河野がいた。
たわいもない話や関西人らしいネタなどをしていた。ぎこちなさはあるが一生懸命やっているように見えた。
その時だった。
2発の発砲音がした後、藪下が倒れステージには血の海が広がった。
『キャーーーー!!』
その場にいたメンバーや客席にいた人たちから悲鳴が起きた。
霊大はすぐステージにあがり、救急車を呼ぶように指示した。
幸いまだ脈は動いていた。しかし安心はできなかった。
救急車が到着し、その後の公演はもちろん中止になった。
「なんで…なんで柊が撃たれたんや…」
渡辺が深刻な顔をして言う。
「そもそもあの場に銃を持ち込むことさえ不可能なはずです…」
確かに注意して確認しているならばそんなことに気づかないわけがない。あんな大勢の中で発砲など不可能に近い。
「なんとも言えねぇな。とにかく藪下の無事を祈ろう。」
3人は小さく頷いた。
「藪下のやつ病院運ばれたな。」
「まぁ多分助からんな。ええとこ撃ったし。」
「まぁそれもやりやすくしてくれたあんたのおかげやけどな。」
「うちがおらんかったらこの作戦できひんやんか。」
「まぁな。とりあえず藪下は完了。次誰やっけ?」
「誰ってあんた…決まってるやん…もちろん…」
「山本彩やろ。」