第三十三話
「ん…ううん…」
「あぁ。私たちも負けたんだね…」
2人は起き上がり落胆したままそのまま座り込んでいた。
「本当に目的はSKEでトップになることだったのか?」
霊大は木本に再度質問した。
「間違ってないわ。あたしね、有望株として選抜とかにも選ばれてたの。それなりに人気もでたしね。」
しかし、その後他のメンバーも人気が出始めると選抜でも後ろの方に回されたりするようになっていった。
それでも、諦めたくない。もう一回頑張ろう。そう誓った時、大場の兼任が決まったという。
「みなるんさんはSKEに来てすぐに選抜にはいった。しかもバラエティでも面白さを生かして人気がでてきて…それに嫉妬したのかな…」
ただでさえ危ないのに大場の加入によりその危機感、不安がより増してしまった。それが今回の真相であった。
「なるほどね。柴田は?」
「私も単純にSKEでトップになりたかっただけよ。たまたま花音さんと意見があったから…」
SKEのトップを目指す2人の意見がたまたまあい、それが事件に繋がったということである。
2人の意見を聞いた入山が喋りだした。
「私…それは違うと思う…」
「え…?」
2人は入山の方を見る。
「私もね、次期センター候補とかゴリ推しだとか、同期のメンバーが人気になっていくの見るとやっぱり焦るよ…でもね。そこからどうするかはやっぱり自分の努力次第だと思うの。花音ちゃんたちはそこから逃げただけ。」
入山の言葉を2人は黙って聞いている。
「だからさ。ちゃんとメンバーに謝って、しっかり話し合ってもう一度やり直せばいいんじゃないかな?」
入山は2人に優しく微笑みかけた。
「無理だよ…もう戻れない…」
木本は悲しそうな顔をしていた。
「だって私たちもまゆゆさんみたいになるから…」
「させねぇよ。今度はしっかりとやる。もうあんなことは起こさせない。だから安心しろ。」
「……ありがとうございます……」
木本も柴田も泣いていた。その後、他のメンバーにも謝り、後日しっかりと話し合いをすることも決まった。
霊大、入山、芝の3人は柴田と木本を守るために栄にあるホテルに来ていた。
「今日はここで泊めよう。念のために偽名で宿泊してある。」
「ありがとう芝っち。見張りは2人ずつでいこう。1人は休憩のために仮眠をとるんだ。」
「わかった。それでいこう。」
「じゃあ最初は俺と杏奈で行く。芝っちは休んでてくれ。」
「わかった。じゃあまた後で。」
そう言い残し芝は部屋へと戻った。
柴田、木本の部屋に行き2人に見張りの説明をした。2人も少し安心したような顔だった。
霊大は部屋から出て、ドアの前で杏奈に話しかけた。
「なぁ。良いのか?お前にまで見張り頼んで。」
「良いのよ! 今更なに気使ってんの?」
「いや。だってよ…」
「ほんとそういう心配性な所は昔から変わってないね…」
「うるせぇ。ただ危ないかもしれねぇからな。」
「だからそれは心配してくれてるんでしょ?」
入山は意地悪く笑う。
霊大は照れて顔を逸らした。
「なんで顔逸らすのよ〜!」
「いいから黙ってろ!」
2人はいつ来るかわからない敵への不安を消すかのように話を続けた。