第2章 boy meets girl 時々
02
「お前ら遅いぞ!」

体育館に着くとジャージ姿の篠田先生が待ちくたびれた様子で立っていた。2年5組の中で一番張り切っているのは間違いないなくこの人だろう。演劇をすることに決まったことを報告した時、開口一番 私も出ていいかと聞いてきた。

「よし、練習始めます。今日は中盤のシンデレラがお城の舞踏会に参加するシーンからやります。」

篠田先生を含めたほとんどの人に役がある中、俺は監督兼照明係となった。人前で演技するのがちょっぴり恥ずかしいと思ったから。
そしてアンケートをとった結果、演目にする童話はシンデレラに決定した。誰もが知っている話だろう。


「おお、なんて美しい女性だ。ぜひ私と踊ってくれないか?」

「王子様!喜んでお受けします。」

シンデレラと王子様の出会いのシーンが着々と進んでいく。肝心の主役はシンデレラを入山が、王子様は女の子だけどクラスの男子よりも王子様が似合うといった理由でクラス一活発で明るくボーイッシュな女子の宮澤佐江さんが演じている。

「ではご一緒に。」

宮澤さんが入山の手を取ると同時に俺は右手を挙げて舞台袖に合図を送る。袖から上西さんを先頭に6人出てくる。全員楽器を持っている。6人がスタンバイしたのを確認してまた俺が合図を送る。今度は何重にも重なった美しいメロディーが体育館中に響き渡る。そして、王子様、シンデレラを含めた舞台上にいる人が全員踊りだす。
このシーンが最も観客が盛り上がるシーンだと思う。2年5組には吹奏楽部に所属している人が上西さんを含めて6人いる。だから、舞踏会のシーンではCDの音源ではなく、生の楽器の音を使いたいと思って6人に演奏して欲しいと頼んだ。もちろん全員快諾してくれた。



「今日はみんなすごく良かったよ!次の練習も頑張ってね!」

篠田先生の締めの言葉で今日の練習は終了した。

「あー疲れた。どうする、帰りマックよる?」

「あ、私も行く!」

そんな会話んしながらみんな帰っていく。

「ねー光太郎、私のシンデレラどうだった?」

「可愛かったよ。本当、俺が王子役やりたかったな。」

「あんたは王子って顔じゃないからね。」

「うるせー。」

すぐ後ろから高野と入山のイチャついた会話が聞こえてくるのを無視する。みんな荷物を持って体育館に来ていたので人の流れは教室ではなくそのまま下駄箱へと向かっている。
その流れに逆らって俺は教室へと足を運ぶ。もちろんゴミ袋を取りに行くため。

外も薄暗くなってきたからか、誰もいない教室を少し怖いと思ってしまった。ゴミ袋を取り、足早に教室を出ようとすると出入り口に誰か立っていた。

「今日もゴミ捨てか。いつもありがとう。」

「なんだ、神村くんか。いいよこれくらい。神村くんは忘れ物か何か?」

「う、うん。まあね……。」

そう言う神村くんはなんとなくそわそわしているように思えた。

「そっか、じゃあまた明日。」

神村くんの様子が少し気になったけど特に聞くこともしないで俺は教室を後にした。







バンバンバン ( 2014/07/15(火) 17:42 )