第1章 陽に映える少女
06
ホームルームが終わり放課後を迎えた教室には5人の生徒がまだ残っている。

「まさか山下くんがクラスリーダーになるとはなぁ。」

「本当に意外だよね。」

「こりゃあ明日は季節外れの大雪だな!」

フルートの手入れをしている上西さん、手鏡を見ながら入念に前髪をいじる入山、今日の練習メニューをノートにまとめている高野が各々の作業をしながら俺をからかってくる。

「お前ら他人事だと思って言いたい放題だな。」

あの後正式に文化祭クラスリーダーに任命されてしまったので、篠田先生から早速仕事を言い渡されてしまった。

「まっ何か手伝える事があったら言ってくれよな。多分、健が頼めばみんな素直に協力してくれると思うぜ。」

「おう、サンキューな。」

篠田先生と似たようなことを言いながら高野は部活の練習に行ってしまった。

「私もそろそろ行こうかな。」

フルートの手入れを終えた上西さんも部活に行こうと身仕度を始める。

「あっ恵、今日も自主練するならまた私も見てていい?」

「ごめんな、今日は全体練習なんよ。」

「そっかぁ。」

暇つぶしの相手がいないと分かった入山は残念そうだ。

「でもな、今度のコンクールは私もメンバーに選ばれるチャンスやから頑張らなあかんねん。」

「頑張ってね恵!メンバーに選ばれたら観にいくからね!ねえ山下?」

「ああもちろん。」

「ほんまに!?やばいめっちゃやる気出てきた!」

全ての荷物を持つと上西さんは駆け足で教室を出て行った。

「じゃあね、杏奈、山下くん、神村くん!」

こういう所が本当に上西さんは性格が良い人間なんだと改めて思う。どんなに急いでいても必ずあいさつをしてくれる。それもそれまで話していた俺や入山だけでなく、まだ教室に残って少し離れた席で黙々と学級日誌を書いていた神村くんにもしっかりと。

「じゃあ俺も行こうかな。」

「え、どこ行くの?」

てっきりまだ教室に居続けると思っていたのか入山が驚いた顔をした。

「焼却炉にゴミ捨てに行く。」

「また?あんたいつからゴミ捨て係になったの?」

「別に良いだろ?誰もやりたがらないし。」

時計を見るとちょうどあの日あの時あの子に会ったのと同じ時間だった。今日はもしかすると会えるかもしれないと思った。俺はカバンを持ち、ゴミ袋を手に取る。今日はいつもより多く2袋あった。

「んーしょうがない!特別に私が手伝ってあげる。」

「いやいいよ別に。お前暇なだけだろ。」

「いいからいいから!」

入山は強引に俺の手からゴミ袋を1つ奪った。

「たく……。ごめん神村くん、教室の戸締まりお願いしていいかな?」

「ああ任して。」

学級日誌から目線を上げることなく神村くんは答えたので、俺と入山は焼却炉に向かっていった。



バンバンバン ( 2014/07/12(土) 01:12 )