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金曜日の6限目、先生が不在の教室はすぐそこまでに迫った週末が待ち遠しくたまらない奴らで騒がしくなっている。本来ならこの時間は篠田先生の数学の授業だったが、先生の発案により進路希望調査と銘打った二者面談が1人ずつ行なわれている。
ワイワイはしゃいでいたクラスでも目立つ派手めな女子グループと学級委員の神村くんが小競り合いをしているのを横目に今朝買った音楽雑誌を読んでいると、
「ほんま音楽好きなんやな。」
誰も座っていなかった目の前の席に腰掛けた上西さんが声をかけてきた。
「うん、まあね。上西さんには悪いけどクラシック好きじゃなくてロック好きだね。」
「クラシックも良いんやけどなぁ。でもそんなに好きなんなら山下くんもバンドくんだりしたらええやん!」
「嫌だよ。そんなことしても俺、長続きしないと思うし。」
「そんなことないと思うけどなぁ。あっ、それより聞きたかったねんけど、最近毎日教室のゴミを焼却炉に持っててるな。なんでなん?」
「えっと……。」
焼却炉であの子と出会って一週間、自主的に毎日帰り際に教室のゴミを持っていくようにした。なんとなくだけどもう一度あの子に会いたいと思ったから。しかし上西さんにそんなこと言えるわけない。
「やっぱり幽霊見たん?」
上西さんの口から思いがけない言葉が飛び出した。
「ゆ、幽霊?」
「そう。ここのところ吹奏楽部内で話題なんやけど、焼却炉で何かを燃やす女の子がおって近づいていったらおらへんようになるらしいねん!なっ、幽霊やろ?」
やや興奮気味に上西さんは話してきた。あの日見たあの子は幽霊?そんな訳はない。
「俺は何も見てないよ。それに幽霊なんていないでしょ。」
「えーそうかなぁ。」
「おーい、山下。次お前の番だぞ。」
もう少し上西さんの話を聞きたかったが面談の順番が来てしまった。