5話
和哉「やっと来たか。思ってたより遅かったな」
由紀「えっ、えっ・・・どういうことですか?」
由紀が生徒会室のドアを開けて入ると、和哉が待ち構えていた。
和哉「俺が一人だけ残ってるって分かったら、すぐに来ると思ってたんだよ。思ってたより待たされたけどな」
和哉は由紀の思考と行動を予測し、自らは有利な状況を維持するよう動かず生徒会室で待機していた。もし、自宅に押し掛けられて、奈々との禁断の関係を知られたら・・・、もし奈々に由紀達との行為を見られたら・・・。和哉はそのようなリスクを選択しなかった。
彩「ウチらが戻ってくるって信じてたん?」
美優紀「それやったら、いっぱいサービスせなアカンな〜」
和哉が待っていたことが嬉しかったのか、由紀達は笑顔を見せる。
由紀「期待してもらってたなら仕方無いですね〜。いきなり秘密兵器投入しま〜す」
彩「山田、連れてきて」
菜々「何でいっつもウチなん?」
彩「文句言わんとさっさと行け」
『秘密兵器』と呼ばれる少女を連れてくるよう言われた菜々は、愚痴を溢すが、彩に一喝され、渋々生徒会室から出ていく。
菜々「連れてきたで〜」
数分後、菜々が一人の少女を連れてくると、和哉は頭を抱える。菜々が連れてきた少女も真新しい制服を着ていることから、一年生だと容易に推測できたから。
由紀「高等部一年の川本紗矢ちゃんです」
紗矢「・・・よろしくお願いします」
由紀「どうですか?可愛いって思いますよね?この娘のマシュマロもいっぱい研究していいんですよ」
マシュマロ研究会がどのような活動をするか知っていたのか、紗矢は笑顔を見せてはいたが、恥ずかしさから紅潮していた。
由紀「えっ・・・いきなり紗矢ちゃんのマシュマロの研究ですか?紗矢ちゃんの研究はマシュマロ研究会を認めてからですよ」
和哉が立ち上がり、紗矢に近付くと由紀と彩が二人の間に立ち塞がる。だが、和哉は二人を押し退け、紗矢の目の前までいく。
和哉「こら、こんな先輩と一緒にいたら馬鹿が移るぞ」
和哉が紗矢の頭をポンと軽く叩いて言った言葉を聞いて、彩と美優紀は笑い出す。
彩「あははは、馬鹿が移るって・・・そないなこと言うたら・・・山田が可哀想やな・・・あははは」
美優紀「そんなホンマのこと言うたら、ななたん可哀想やな」
菜々「もー、みんなで何なん?酷すぎるわ!」
常に貶され、菜々は今まで見たことがないくらい頬を膨らませる。
和哉「言い方が悪かったかな。川本さん、だったかな?この四人の馬鹿な先輩とは関わらないようにした方がいいぞ」
和哉が紗矢の髪を優しく撫でると、紗矢は満更でもない表情で和哉を見詰める。
紗矢「はい、分かりました。あの〜今度、友達と遊びに来ても良いですか?」
和哉「忙しくない時なら、構わないよ」
紗矢「ありがとうございます。また今度遊びに来ます」
和哉が生徒会室に遊びに来てもいいと許可を出すと、紗矢は細い瞳を更に糸みたいに細め、可愛らしい満面の笑みを見せ、帰っていく。