8話
試合ではないのだから、ダイヤモンドを一周しなくても良かったが、和哉はわざと一周走り、祐介に見せつけるようにホームイン。
和哉「なぁ、ヒットじゃなくて、ホームランだから、俺の負けか?」
「祐介のあんな姿見て、そんなこと言うか、普通」
和哉にホームランを打たれたショックで、マウンドに崩れ落ちた祐介。その祐介の傷口に塩を塗り込むようなことを言った和哉。
和哉「じゃあ俺の勝ちってことで良いな?」
「負けって言うヤツいないだろ」
祐介に代わり元宏が負けを認め、勝負終了。
和哉「俺も鬼じゃ無いし、十五位以内ってのは、無しにしてやるよ」
「じゃあ、五十位以内か。サンキュー」
和哉「いーや、三十位以内。じゃあな」
「ちょっと待ってくれ」
三十位以内と聞いて、元宏は帰ろうとする和哉に追いすがるが、和哉は意に介さず、野球場をあとにする。
玲奈「会長、凄かったです」
由依「野球、やってはったんですか?」
生徒会室に行く道すがら、玲奈達は先程の勝負で、普段運動音痴だとは感じさせないバッティングを褒める。
和哉「あ〜、マグレマグレ。それより、今日中に予算案終わらせるぞ」
これ以上触れられたくないのか、和哉はマグレだと言うと、早足で生徒会室に行く。
二時間後、予算案作りが終り、麻友が生徒会室から出ようと、扉を開けると
愛李「長官、新聞部の部費ありますよね?」
扉が開くのを待っていた愛李が、飛び込むように入ってくる。
和哉「新聞部の部費?生物部と生徒会で分けたから、無い」
愛李「話が違うじゃないですか〜。っていうか、生徒会にお金いらないですよね」
部費が無いと言われた愛李は、瞳に涙を浮かべながら訴えるが、和哉は全く気にせず、机の上を片付ける。
愛李「何でもやるから、部費を恵んでください、お代官さま〜」
和哉「しかたない、部費をやるから、もっと働け」
土下座までした愛李を哀れに思った和哉は、新聞部の部費を元に戻すことを約束する。勿論、和哉の情報収集役を今まで以上に頑張ることを条件として。
愛李「ありがとうございます。スパイ古川、長官のためにもっと頑張ります。では」
部費を貰えると分かると、愛李は喜び勇んで生徒会室から出ていく。
麻友「ご主人様、古川さんとHしてないですよね?」
由依「古川さんに何させてるんですか?」
愛李が情報収集役をしているとは知らない由依と麻友が、和哉と愛李の関係を問うが、玲奈が説明し、納得。
和哉「あーぁ、やり直しか・・・」
溜め息を吐いた後、気付かれない程度、他の部の部費を削る作業を一時間掛けて行う。
勝負の翌日から、元宏の提案で、野球部のランニングの掛け声が祐介の九九に変わった。冗談半分で言わせてみたら、見事に間違え、元宏を呆れさせる。祐介が九九を間違えることなく言えるようになるまで、ランニングをすると決めた初日は、練習が終わるまで祐介は九九を間違え続ける。
これは、他の部員への見せしめとしては、効果があり、これは期末テストが始まる数日前まで続けられた。
部費を全額貰えると知った愛李は、新聞部員にも情報収集をさせ、噂から、不穏な企み等のあらゆる情報を和哉に教え、和哉の私設諜報機関として、新聞部を活動させるようになる。