3話
リビングに案内され、和哉と謙二はソファーに座る。和哉は玲奈の部屋に行くつもりだったが、謙二に強引に連れてこられた。普段は真面目な優等生を演じていたことが、この場合は裏目に出た。
謙二「・・・・・・・・・・・・・・・男というものは、無防備な女がいれば、襲うものなんです。だから、警戒し過ぎということは・・・・・・・・・・・・」
長々と持論を展開する謙二。和哉は、その持論の穴を衝く。
和哉「ってことは、先生は無防備な姿で玲奈が寝てたら襲うってことですよね?」
和哉の言葉で玲奈は僅かながら謙二から離れ、咲子は謙二を冷たい目付きで睨み付ける。
謙二「バカ、それはあくまで一般論で・・・私は咲子さん一筋だ!」
和哉「幾ら松井先生一筋でも、先生も一般人だから、一般論は当てはまりますよね?」
和哉は何度も謙二の揚げ足をとり、からかう。玲奈との二人きりの時間を邪魔されたことに苛立っていた。一方、謙二も中々帰らず、揚げ足とりする和哉に苛立っていた。
謙二「岡田、松井を狙ってる男は沢山いる。そんな中、女の木崎に気絶させられるほど弱いお前が、松井を守れるのか?」
空手有段者で、空手部顧問の謙二はゆりあが話していたことを、偶然聞き、それを和哉に話す。女に負けるほど弱いと思っている和哉がビビると思って。和哉にとっては、予想外の朗報だった。仕返しのために密かにずっと探していたが、今まで有益な情報は入ってこなかった。それが棚ぼたみたいな形で入ってきたのだから、内心笑いが止まらなかった。
和哉「守るっていうのは、空手とか格闘技を使った暴力でってことですか?俺はそんなもの無くても玲奈は守れますよ、先生と違って」
謙二「空手は神聖なものだ!侮辱するな!よし、わかった。岡田、今から私と勝負だ」
和哉「良いんですか?有段者が素人に負けるようなことがあっても」
怒る謙二を和哉は更に挑発。玲奈と咲子が必死になって止めようとするが、謙二は止まらない。
謙二「私をKOするか参ったと言わせたらお前の勝ちだ。それ以外は私の勝ち、それでいいな?」
和哉「良いですよ、それで」
二人は広く何も置いていない空き部屋に行くと、向かい合う。
謙二「私が勝ったら、すぐに帰るんだぞ!」
和哉「はいはい、分かりました。それで良いから、掛かってきてください。俺は守るって立場だから、迎え撃たないといけないんで」
謙二「よし、では、行くぞ!」
謙二は掛け声と共に和哉に殴りかかり、和哉は手に持っていた粉末を目眩ましに使い、謙二の視界を奪う。
謙二「岡田、卑怯だぞ!正々堂々と・・・・・・」
カウンター気味な蹴りを鳩尾に決め、崩れ落ちる謙二の延髄に手刀で強力な一撃を決める。
和哉「これは試合じゃない、勝負だ。勝てば手段なんて関係ないよ。ズルいとか卑怯って言うのは、負け犬の遠吠えですよ・・・・・・って、聞こえてないか」
立ち会って十数秒で、謙二をKO。部屋には謙二が倒れた時の埃が僅かに舞っていた。