第9章 キスと変わらないもの
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そのあと1時間くらいして体育館に
戻る途中制服姿の潤一や先輩たちと出会う



「三上、さっき運悪く太田が来て
お前がサボったことがばれてモップやれってさ」


「マジっすか?」


俺は体育館の倉庫からモップを2本取り出して
ゆっくりとモップ掛けをする


「手伝うよ」


背中の方から下声に
俺は首をひねった


「いいよ、帰れって
もうすぐ暗くなるし」


声の主はそんなことを
気にも留めずに

俺から一本のモップを
取った



「大丈夫だよ」


そう答える遥香は
俺に微笑んだ



あれから離してない
けどなぜか、気まずい雰囲気はなかった


「この間は助かった」



「え?」


「頭痛薬」


遥香はまた嬉しそうに
微笑んだ



夕焼けの空から
オレンジの光が
体育館に入ってくる



「あのころと変わらないね」


気が付くと遥香も同じ方向を見てた


「あのころ?」


「うん、小さいころ
いっつも練習の後に龍くん私の
練習に付き合ってくれたでしょ
あのころに見た夕焼けもこんなだったよね」


遥香はボール籠から
ボールを取って俺にひょいっと投げた


そのボールは3回バウンドして
俺のもとに届いた


「そうだったな」



俺はそのボールを受け取ると
バスケットゴールをちらっと見た
3ポイントラインの少し手前
俺はシュートモーションに入ってかるーく
シュートを打った


さっきまではあんなに
リングに嫌われていたのに
それが嘘のように
リングに触れることなく


シュッ
と音を立てて
リングに入った


俺はそのボールを遥香に優しく
パスした



「あわわ」


遥香は見事にボールをキャッチできなくて
そのボールを追いかけるように取りに行く


「変わんねーなあのころと」


「え…………?」


「相変わらず下手だな」



遥香は口をつむるような
んの口をして

俺の腕をたたいた


「いじわる」


目の前に広がる
夕焼けがあのころの
記憶を呼び戻す


あのころの俺は
毎日何を考えて


何を思ってんだろう



あのころは毎日バスケが楽しかった


小学校の頃は背が高くて
バスケでも同級生の中では
1番だったと思う



でも、今はどうかも分からない




ライト ( 2016/01/28(木) 22:25 )