第9章 キスと変わらないもの
03
あれから、遥香とは
一言も話さなかった


あの3日後から
試験に入ったからなのか


それとも
見られたからなのか

教室で目が合っても
廊下ですれ違っても

そこに会話はなかった



お互いがお互いを
避けている感覚


別に遥香に浮気現場を
押えられたわけじゃないんだから



もし遥香に
あの人は龍くんの彼女なのって聞かれたら


俺はなんて答えるんだろう


でもたぶん俺は遥香に言わない




「なぁー龍明日の古典教えてください
やばいんだよ」


テストが終わると
真っ先に俺の教室に潤一が
入ってきて


教室にいたクラスのやつはくすくす
笑う


「やだよ、めんどい」


「ファミレスいこ
昼飯おごってやるから」


「はぁーしょうがねーな」


俺と潤一は
近くのファミレスに入る



でも、潤一はすぐに
ドリンクバーに行って
明らかに勉強する気がない


「なぁなぁ、あっちにさ」


「なんだよ」


メロンソーダをコップいっぱいに
入れて持ってきた潤一が
大きな声で
こっちを呼ぶ


「あっちにさ、島崎とか白間とか
いたぞ」


その方向に目をやると
白間が立ってこっちを見ていた


遥香は座ったまま
気まずそうに下を向いている



「おう、やっぱ白間たちも
明日の古典がやばいの?」


いつの間にか潤一は
白間を呼んで話しかけていた


「うーん、古典もだけど
英語もやばいから遥香に教えてもらおうと
思って、英語の成績いいから」


「はぁー英語もあんのか明日は」


「三上君たちももし、よかったら
一緒にする?」


「おう、俺はいいよ
なぁ龍太?」


「あーおう、島崎とかほかの女子は
大丈夫なの?」


俺は理由をつけて
断ろうとする


遥香も気まずいに違いないから



でも、他に来ていた
女子の返事に押されるように
遥香も小さくうなずいた



そのまま女子3人と俺ら2人
5人で勉強することになり


遥香の横には潤一が
さっと急ぐかのように座り
俺は白間の横で
遥香から対角線上になっている



「ねぇねぇ、三上君
ここなんだけど」


「あーえっとここは
この約でいいと思うけど
案外テストだったらこっちがいいと思う」


「やっぱり、三上君頭いいね」

なんかさっきから白間が
近い気がする
すっごい、俺によって来ていて
顔が近い


「いや、そんなことはないけど………」


「遥香も、三上君に
教えてもらいなよ、古典ダメだって言ってたじゃん」


その声に遥香は
ただ頷いて、俺と白間をじっと見た


「あとで、教えてもらおっかな」


「ごめん、白間
俺、ジュース入れてくるわ」



そう言って立ち上がる


ドリンクバーの前に立って
ため息が出る

さっきの遥香の目
あの目が脳裏に焼き付く



「何飲むか迷ってるの?」



急な声にコップを落としそうになった

だってその声が遥香だったから


「迷ってなんかない」


そう言って適当に
入れる


「美瑠と仲いんだね?」


「別に、ただ教えてるだけ」


「ふーん」


俺は遥香から逃げるように
席にかえった




ライト ( 2016/01/23(土) 23:52 )