第8章 記憶の中の涙
04

次の日学校を休もうかと思った


でも休みたいのは白間の方だろう
だから俺はそんな俺の罪滅ぼしのつもりで
家をいつもより早く出た




そして教室に入ると
すぐに白間を探す



よかった

その姿を確認すると
少しだけ気持ちが軽くなった



でも、やっぱり元気はなくて
いつもは遥香と笑っているのに



だから俺は小さく息を吐いて
白間の方へ足を向けた



「白間……」


3人で話していた白間は慌てて
俺の方を向いた


俺の顔を見るとやっぱり
おびえたような顔をする


「ちょっといい?」


「うん………」


彼女は俺の後についてきた






そして俺は俺なりに
落とし前を付けた



昼休みにまた白間に目を向けると
また楽しそうに遥香と笑っている


それでも、俺はまだ
罪の重さが消えなくて


静かに教室を後にして
静かな部室に逃げた






部室の長椅子に横になる
やっぱりここが落ち着く


昨日遥香に言われた
言葉は俺の痛いところをついた



でもそれは分かっている




たぶんずっと前から



でもそういうことが言えるのは
遥香だから



小さいころの俺を唯一知ってるから




その時静かにドアが開く音がして
さっきまで教室にいたはずの
遥香が立っていた



「龍くん」


「ん?」


「昨日はごめんね
怒っちゃって」


「いや………
俺の方こそごめんな」



「ううん……」


遥香はゆっくりと
長椅子に近づいて
上から俺の顔を覗き込んだ


茶色く透き通った目が
俺をとらえる


そんなあり得ない構図に
ドキリとした

でもだんだん恥ずかしくなって

「何見てんだよ」


遥香は小さく笑って


「美瑠に謝ってくれたんだね昨日のこと」


「………まぁな」

今朝のことなのに
やっぱり女子は情報が早いな


「美瑠喜んでたよ
三上君と話せたって」


「そっか、なんかうれしいな」


いつもなら嬉しいなんて言葉でないのに
なぜか遥香の前だと素直になれる気がする

「やっぱり、龍くんやさしいね」


「そんなことねぇよ」







ライト ( 2016/01/13(水) 18:05 )