第8章 記憶の中の涙
03

昼休みの記憶が戻ると
遥香が見ていた


「白間には本当に悪いと
思ってるよ」


「…………」


「でもさ、俺クールでも大人でもないし」


「…………」


「きっと、そう勘違いしたんだろうな」


いつもより、口数が多くなる


「何言ってるの?」


「え?」


「クールでも大人でもないって
そう見せてるのは龍くんだよ」


「……………」


遥香は俺に一歩近づいて


「ねぇ、いったいどうしちゃったの?」


「…………」


「私は、入学式の教室ですぐに龍くんだって気づいたよ
中身は別人みたいで……」


「…………」


「昔の龍くんはそんなんじゃなかったよ」


「…………」


「すぐに怒って、お調子者で
でも、正義感が強くて」


「…………」


「今は、何に対しても
無関心で、ただそれが大人っぽく見えるんだよ
きっとみんな思ってるよ」


「…………」


「齋藤さんのことは何も言えないけど
それでも………もっと言い方があったでしょ」


「島崎…………」


遥香の目からこらえきれなくなった
涙が一滴ぽろっと落ちた


「自分が悪いのに
全部美瑠のせいにするなんてひどいよ」



遥香の足音が遠くなっていく

さっきの白間と姿が重なる



俺はどこまで最悪なんだよ
1日に2人も泣かせるなんて



俺はどこまで逃げたら
自分に向き合えるんだよ






ライト ( 2016/01/12(火) 23:10 )