第8章 記憶の中の涙
02

「何?」


「うん、えっと」


昼休みに同じクラスの
白間に呼び出された


珍しく名前を憶えているのは
よく遥香と一緒にいるから



「………」


1分くらい沈黙が続く
だいたいこういうのには慣れている


「あのね、三上君」


「…………」


「私、三上君のことが」


「………」


「ずっと好きだったの
齋藤さんと付き合う前からずっと」


「…………」


「だから、別れてすぐだから
言いにくいんだけど」


「……………」


「付き合ってください」


真剣な彼女の目とは逆に
俺の目は冷め切っていた


たぶん彼女は運が悪かった
こんな気持ちの俺だったから



ずっとたまっていたイライラを
彼女にぶつけたんだ


ガキみたいに


「なら、なんでそんなんするの?
それに、俺のどこがいいの?」


「ごめん………」


「なぁ俺のどこがいいの?」


俺は普通じゃなくて
セフレがいて、嘘で真剣に告白してきた奴をだまして
そして、勝手に転校したことを被害者のように思って
自分でもわかる



自分が最低だって
だからこんなに、つくろっている俺のどこが好きになるんだよ



「えっと、いつもクールで
頭もよくて、落ち着いていて大人なところかな」


大人?
クール?


そんなの一つも当たってない
七瀬や奈々未が聞いたら笑われるにきまってる


「勝手なこと言ってんじゃねーよ」


「え?………」


「お前俺のこと知らねーくせに
知ったようなこと言うなよ」


「…………」


だから今さら後悔が始まる
でっももうその後悔は120%遅くて


目から大粒の涙を
流すと俺の前から走り去った


彼女は200%悪くなくて
俺は単に自分の嫌なところを
直視してただ耐えられなかった



ライト ( 2016/01/11(月) 21:38 )