第7章 言葉では言えなくて
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それから何日か過ぎて
その間も飛鳥とは学校の帰りに一緒に帰ったり
した、二人ともあんまりしゃべる方じゃないから
会話はあまりなくて


二人で帰り道に本屋に行って
ただただ一緒に本を読んだり
自分の好きな本の話をしたり

共通の趣味の読書の話で
盛り上がったりして



でも手をつないだだけだった



「ごめん、今日も待ってもらって」


「うんん、大丈夫」


「そうだ、この本ありがとう
すごくおもしろかった」


俺は借りていた小説を
鞄から取り出した

「ホントに、でも龍太くん読むの早いね
一昨日に貸したのに、私龍太くんに借りたの
まだ半分しか読んでないのに」


「いや、読みだすと夢中になるじゃん
本って、だから授業中も読んでた」


「あ、でも分かる、人の話が入ってこないときある」


そんな話をしていたら
いつの間にか飛鳥の家の近くになって


「いつの間にかここまで来ちゃったね」


「ホントだ」


「龍太くん靴ひもがほどけてるよ」

俺は下の方を見ると
右のスニーカーのひもがほどけていて
そのまましゃがみこんで
靴ひもを固く結んだ



「ごめん、待ってもらって」


そう言って立ち上がった瞬間
背負っていたリュックの中の教科書が傾いた
でもそんな衝撃より



俺の唇に飛鳥の唇が
当たった


キスなんて慣れてるの
でも不意打ちのキスに驚いて


でも俺の3歩前に後ずさりした
飛鳥の顔は夜の街灯の明かりだけでも
真っ赤になっているのは分かって
でも、目には少しうるんでいて




「バイバイ」


そう言って逃げるように
帰って行った




俺は
そんな飛鳥を俺は好きになろうとしていた

いや少しずつ
ほんの少しずつ

なっていた















ライト ( 2016/01/04(月) 23:14 )