第6章 想い人
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飛鳥と付き合い始めた
あの学校であった日から
遥香は俺のことを龍くんって言わなくなった気がする


俺もそのまま部室を後にする


門まで歩くと
飛鳥が寒そうに立っていた

身に着けている赤と緑のマフラーをしっかり巻いて
耳を赤くさせて立っていた


「ごめん、飛鳥」


「あっ、うんん私が勝手に待ってただけだから」


「どっか、あったかいところで待ってくれればよかったのに」


「うん、でも私は龍太くんを
待ってる時も嬉しくて」


照れくさそうに
小さな顔をマフラーでさらに隠した



その姿に少しドキッとした



「あのね、これ龍太くんに」


飛鳥は持っていた小さめの
トートバックから小さな紙袋を取り出した


「おっ、ありがと
うまそう」


その袋の中には
小さな箱が入っていて
チョコレートが入っていた


「私、料理とかいつもしなくて
それで…おいしくないかも………」


「なら、食べていい?
早く食べないとさ、まずかった時文句言えないわ」


「もう、ひどいよ」


飛鳥は下を向いて
照れくさそうに地面の石を蹴った


「うーん、おいしいよ」


「本当に?」


「うん、飛鳥すごいね」


「エへへ………クシュン!」


「寒いよね?さっさと行こっか
でもその前に」


「え?悪い

俺は飛鳥の首に自分のしていたマフラーを
巻いた、元から埋もれかけていた小さな顔が
二重のマフラーでさらに埋もれている



「いいのいいの、俺は
女の子には優しくしないとね」



「ありがとう」


そのまま歩いて駅まで向かっていく
でも今日は急に飛鳥が俺のセーターの裾を握った
俺が飛鳥の方を見ると
恥ずかしそうに目をそらした


だから何も言わずに
そのまま何も言わないまま二人歩いて行った









ライト ( 2015/12/29(火) 23:12 )