第6章 想い人
04








「え?嘘………」


私の顔のすぐ近くに龍太君の顔があった




「飛鳥……大丈夫か……」



龍太くんの背中や髪の毛はびしょびしょになっていた



「嘘!なんでよ三上君」


龍太くんの後ろに少しだけ見えた
女子の先輩たち
さっきまでの顔と比べて
まるで鳩が豆鉄砲を食ったような顔だった



龍太くんはゆっくりと振り返って


「あの、先輩方
飛鳥は俺の彼女ですよ
いじめないでやってくれます」


「…………」


「もし、次なんかあったら俺
あんたらのこと許さないっすから」


「…………」


龍太くんはくるっとこっちを向いて
さっきまでとは違う
笑顔でこっちを見た


そして私の手を握った
少し速いスピードで今あったことを忘れさせてくれるかのように

ぎゅっと握ったで
私を地獄のようなこの空間から
連れ出してくれた










ずっと手は握られたまま
龍太くんは廊下を進んでいく廊下ですれ違う人が
驚いていても止まることなく
進んでいく


そしてそのままついたのが
屋上だった


「飛鳥……「龍太君ごめんね」



齋藤と俺の声が重なった


「龍太くんとの約束守れなかった………」


そういいながら涙を流す
齋藤を見て俺は心が痛い



自分のために自分を守るためのものが
別の誰かを傷つけるんだ
いつか分かるのに
なんでこんなに齋藤は守ってくれてるんだろ


なんでこんなに泣いてるんだよ


そう思うと

齋藤を泣かせたのは
齋藤を追い込んだのは
齋藤を傷つけたのは



あの女子たちなんかじゃなくて



すべては俺だった



「ごめんね、龍太くん………」


なんで齋藤が謝るんだよ



「なぁ、なんで謝るの?」


「え?」


「飛鳥は悪くないよ
全部俺が悪いんだよ、ごめんな」


「うんん、私が……龍太くんとのこと……」


「もういいよ、俺は飛鳥が泣いてるのをほっといて
隠そうなんて思わない、だから………」


だから俺は


心に決めたんだ


今まではこんな付き合うなんて
思ってなかった


ただ七瀬のためだった



でも俺は



「改めて言うよ
齋藤飛鳥さん、俺と付き合ってください」



俺は飛鳥を好きになろうと決めた



心が少しすっきりした
飛鳥はもう一度泣いた





ライト ( 2015/12/23(水) 22:27 )