第5章 Half lie love
10

「はい、これ三上君の」


齋藤からもらったプリクラも
やっぱり顔が引きつっていて

誰かに見せればたぶんバカにされるな



でも齋藤は嬉しそうにプリクラを見ている



「私はこれがお気に入りだなー」


そこには俺が間抜けな顔をして
カメラのレンズに焦点があってない
その姿を齋藤が見ている写真



「いや、これは
失敗でしょ」


「うんん、だってこんな三上君見るの初めてだもん」


「いや、でも」


「いいの、もう行こ」




そのまま齋藤を送るために2回目の道を歩く



「ねぇ三上君」


「ん?」


「お願いがあるんだけど」


「何?」


「名前で呼んでもいいかな?」


「あーそういえばいつも三上って呼んでるね
別にいいよ」


その言葉で齋藤の顔は一気にほっとした表情になった
そんなこと気にしなくてもいいのに
遥香なんてさいきんでは普通に龍くんって呼ぶし



「なら何て呼ぼうか?」


「別に何でもいいよ」


「なら龍太くんだから
龍くんかな」


「それはダメ!」


「え?」


俺なに言ってんだろ


「いや……あの龍くんって
なんか子供みたいだからさ
他がいいかなって」


「うん、……そうなんだ」



俺は本当に何言ってんだよ
名前なんて別にどうでもいいのに



齋藤の口から出た


龍くんって名前が


なんか違う


いつも遥香に呼ばれてたからかな
違和感があった




でも別にどうでもいいのに

口が先にそう言っていた




「じゃーまたね」


「うん、バイバイ
今日とっても楽しかった
龍太くん」







ライト ( 2015/12/15(火) 23:30 )