08
裏切っていたのに…………
途端に胸に鈍い痛みが走る、その言葉を振り払おうとすればするほどその言葉はいつか聞いた言葉に変わっていく
「大和のことは信じないほうがいい」
「その方が君たちのためだよ」
あの時山本から聞いた言葉が俺の頭の中に現れる
「龍太がここにいるのって…………聞いたんでしょ?」
「聞いたって誰から?」
「湊君から全部」
大和はいったい何を言っているのだろうか、自然に口から出た湊君という呼び名がさらに俺の頭を混乱させていく
「全部って何のことだよ?」
「なんーだ聞いてないの?…………これってもしかして俺が逆に湊君に裏切られてたのかな?」
「……………」
「参ったな、じゃ俺が今ここでカミングアウトしちゃってる状況か」
なんだかまるで夢を見ているかのような感覚、今まで当たりまえに一緒に過ごしてきた大和は山本側だと思いたくない、でも考えてみれば大和の口からはっきりとしたことは聞いてもいない、俺にとってずっとグレーのまま、でもこんな状況でも疑いたくなかった、大和は昔の俺によく似ていると思ったから山本のことが片付いたらこいつはまた俺たちと一緒にいると思ってたから
「それは山本からじゃないよ、大和がここにいるの」
「え?じゃ」
驚きのあまりかすれた声をだした大和
「まぁ別のルートでな」
「もちろん、山本に聞きに行ったけど、あいつは何も教えてくれなかったさ、だから…………山本はお前のこと裏切ってなんかいないよ」
「本当に龍太って人がいいね、俺が女だったら確実に惚れるよ」
「なぁ大和、誰が裏切ったとか裏切られたとかさ、もうそんなのどうでもよおくねぇか?…………いい加減話せよ………痛いんだろここ」
「……………」
「病院じゃ入院してれば傷は治るけど、心は治らねぇよ」
そう言いながらもすべてを明らかにすることに俺の心は大きく揺れていた、もしかしたら山本と遥香のことはすべて作り話ではないか、そんなことが頭をめぐっていく、その時何かが反転したように俺は大和に向かってにやりと笑みを浮かべた
「話すまで帰らねぇから」
「はは、ずいぶん強引だねー今日の龍太は」
「当たり前だろ?じゃないと今度はどっかふらっとお前いなくなるだろ」
あきらめにも似た表情を浮かべた大和の顔はどこか安堵したようにも見えた
「ねぇ龍太、そこのリモコンの上ボタン押してくれる?」
ベットにかかっているリクライニング用のリモコンを大和は指さした、俺はそれを言われるがままに動かした、そしてベストポジションが見つかったのだろうか大和は口を開いた
「湊君の言うことは俺にとって、絶対なんだよ前にも言ったけど」