03
こんな潤一の顔を出会ってから見たことがあっただろうか、そうだあの時の昼休みの屋上、女子に捕まった大和と女子とのやり取りを見ていたあの時の顔だ
「何だよこれ?」
ポカンと開いたままの口は数十秒後正常に動き始める
「何って、遥香ちゃんだよ?」
そう答えた大和からもう一度目の前のパソコンに首を戻すとまた画面を凝視し始めた潤一は、今度は反対側に座る俺に視線を移していから同じことをまたつぶやく
「何だよこれ?」
「だから遥香だって」
俺たちが目を向けているパソコンに写されているのはUSBメモリのデータ、潤一にあれこれ説明してもどうせすぐに理解ができないから俺は実際に見た方がいいと思って部活後に二人を家に招いた、学校で話すのは危険だし、かといって外で話すのも危険だから
「これってよ………盗撮って言うの?」
「まぁそーいうこと」
俺が頷くと潤一はまた食い入るようにパソコンを眺める、映像はすべて同じ角度で画面におさまっていた、音楽室を上から見た角度、写されていたのは大したものではないけど明らかに意図的に遥香だけを映し出すように編集されているようだった
それは音楽室でフルートを吹いている姿、他の部員たちと話す姿、そして山本と仲良く並んで練習している姿も、俺は気づかなかったけどどうやら、このカメラはあのサッカー部の横の秘密の部屋のどこかに仕掛けられていたようだ、大和の弱みを知っている山本は昼休みや放課後にあの小窓を開けさせて、そしてそのデータをロッカーに隠していた
「てかよ、これ犯罪じゃねーか、すぐに警察行こうぜ」
「まぁそれは、もう少し見てからな」
俺は右手のこぶしを左の手のひらに押し付ける潤一に促した、しばらくすると、その映像は一瞬ブレて、別の映像に切り替わる、すると潤一の息をのむような声が聞こえた
映し出されたのは大きな白い上にマス目のようにきちんと並べられた無数の何か、この距離からは少し見えにくいが、俺も初めて見た時はぎょっとしたから潤一が驚くのも分かる
画面の中は結構暗いけど、かすかに見える床みたいなものそこから恐らくこの白い空間は壁だと気づく、きれいに整列していて何なのか分からないがこの多くの数を見ると異様な空気感だ
「で、これ何?」
「まぁすぐに分かるよ」
大和の言葉にじれったさがあふれ出ている潤一は身をぐっと乗り出して画面を凝視する
「どこ?学校?………あれか理科室的な?」
すると、次の映像は固定してあるカメラではなく実際に手で撮られているものに変わる、するとその画面はどんどんズームになって無数にある壁の1点目がけた視点になる、その画面によってその存在は明らかになる
そこに写っていたのは画面に写る遥香だった