07
慣れた手つきでポケットから鍵を取り出して、鍵を開けた大和は俺を部屋の中に入れるとゆっくりと音を立てないようにドアを閉めた、今まで積もっていた大和への疑問が何も解決されないままこんな場所に連れてこられて俺の頭の中に生まれる疑問
「準備ができたんだ」
「準備?」
「そう、龍太にさ話しておくことがあるんだ」
大和が俺に向けた表情から内に秘めた鼓動が聞こえるような気がする、それが俺にも伝染するように奥で何かが波打った、わずかに首を縦に振ると、一瞬音が無くなる
あれほどに大和が抱えている秘密に興味があったのに、その表情が胸を詰まらせていく、たぶんそれを言葉にするなら、期待が不安、恐怖に変わっていく、それは山本にも関係するのではないかという期待と、今からさらに絡み合っていくのではないかという不安、そして何よりも大和の隠されたことを知るのが怖かった
「何だよこれ」
音楽室に入ると、静まりかえった空気の中ポケットから黒い小さな何かを大和は俺に投げた
「USBメモリだよ」
「は?USBメモリって何が入ってるんだよ?」
「…………それは、遥香ちゃんと龍太が入ってるよ」
「俺と遥香?」
「そうだよ」
まるで秘密はすべてこの中にみたいな言い方だ
「でもそれを見るのは龍太じゃないんだ……見せるとしたら理事長かな」
「理事長!」
その名前を聞いただけで思い出される嫌な記憶、その部屋の匂いも温度もあの顔も今でもすぐに思い出せる
「まぁでも正確にはそれじゃなくて、コピーした奴を見せるんだけどね」
「え?何どういうこと?」
「まぁ簡単に言えばすべての証拠が入ってる、そしてあいつが今から何をしようとしているのかも」
「あいつって………山本か?」
「うん………そうだよ」
この渡されたUSBメモリを見ても、画像なのか動画なのか分からないけど、大和が言うようにその証拠とやらがここには入っている、でも素直に喜べない、なんでこいつがそんな情報を持っているのか、そしてなんで俺にくれるのか、表情を変えない俺を大和は首をかしげながら探るように見る
「どうした?あんまり嬉しそうに見えないんだけど、龍太は喜ぶと思ったのに」
そこにいるのはいつものくすくすと笑う大和、でもそれがなぜだか今日のこの空間のせいなのかその笑い方が山本と重なった