第2章 儚い恋
09
「私たち会ったことあったっけ?」

七瀬は遠慮がちに遥香の顔を見た



「会ったっていうか……
私がいっぽう的に」

遥香はその理由を話し始めた
遥香は何度かミニバスの試合があった時に
七瀬が見に来ていたことを覚えていたようだった



まぁでも七瀬はあのころから何も変わっていない
だから覚えていてもおかしくない


「でも、マネージャーって大変じゃないの?」


「そうでもないよ」


「でも、龍太みたいなのがいっぱいいるんでしょ?」


「それだと虫みたいだよ」


「そうそう虫だね
龍太は」


「お前らなんだよ」


すっかり話してるうちに
七瀬と遥香は意気投合し
楽しそうに話している



「あっそろそろ私帰らなきゃ」


「なら私も」


七瀬が椅子から立ち上がと
遥香も荷物をまとめだした



「島崎……サンキューな」


「うん、お大事にね」


「ああ」


「あのー?私にはお礼ないの?」


「あれまだいたんだ」


俺が白々しく言うと
遥香が笑った


「もう、だから来たくなかったのに」


あれ………


「おい、七瀬そこどうしたんだよ
怪我してんじゃん」

ひざの近く

「え?どこ」


「ここだよ」


俺はなかなか気づかない
七瀬の足に手を伸ばした


「ちょっとどこ触ってんのよ」


「バーカその痣だよ」

七瀬のスカートから
っ見えたり隠れたりする
青いアザ


「あっこれか
体育の時間にこけた」


「やっぱりドジだな」


「もう、うるさいな
遥香ちゃんも気をつけてよ
龍太覗いてるかもしれないから」


「え……うん」


遥香は下を向いた


「だってこんな近くで怪我してたら
誰でも気づくだろ」



「本当に気を付けた方がいいよ遥香ちゃん」


「うん……」


「じゃまたね、おとなしくしてなさいよ」




そのまま歩き始める七瀬に


「ちゃんと冷やしとけよ」


「うん……分かった」



二人の足音がだんだん聞こえなくなる
さっきまで騒がしかったのに
今は静寂な空気



でも俺は七瀬に変態だと思われても
七瀬の変化ならどんなに小さくても気づくと思うんだ

だって俺は七瀬のことをずっと見てきたんだ


七瀬にとってはどうってことないことでも
俺には大切なんだ





俺はゆっくり目を閉じた

















ライト ( 2015/11/09(月) 20:50 )