04
「もしかして俺ってそんなにひどく言われてんの?」
ピンと張った糸のような空気に思わずその空気を和らげようとしたけど逆に彼女は固く口を閉ざしてしまったようだ
「ごめん、言いにくいよな………でも生田が俺のこと嘘だと思ってくれてるなら本当のことも知ってもらいたい」
初めて俺の目をちゃんと見た気がする彼女は何かに動かされたようにうなずいた
「三上君が………遥香ちゃんに暴力を振るってるって、それで…………暴力振るってそのあとにえっと……そういうことを無理やりしてるって」
「……………」
「そのことを山本先輩に話したら殴られたって」
「…………」
「それで本当は遥香ちゃんと付き合ってないって、付きまとってるって」
それはなんとなく理事長や山本から聞いていた話だった、だからまた新たに驚きはしなかった、でもその話を接点のない生田から聞いたことが俺にショックを与えていた、すると彼女は不安そうに俺の顔を見た
「あの………ごめんね」
「いや生田が謝ることじゃないから」
「うん………ねぇ三上君………全部嘘だよね?」
生田は不安を包むような声を出した、でもそれはすぐに含み笑いに変わる
「ごめん嘘に決まってるよね」
「いや………」
「…………」
嘘だと今でも信じているであろう純粋な生田にそんな顔をされるととても言いにくくなる、でも彼女が今正直に教えてくれたのに俺が嘘をつくわけにもいかなくなる
「山本先輩を殴ったのは………本当かな」
「どうして?………そんなの三上君らしくないよ」
耳に届いた言葉に俺は苦笑いを浮かべる、そんな様子をみて生田は慌てるように口を開く
「あっ………ごめん……私そんなに三上君と話したことないのに」
「まぁあとは全部嘘だよ」
俺はまた生田の右手が日誌を書き始めるのを見ると、窓の方を向く、正直聞かなければよかった、なんて今さら言っても遅いけど、そんなことを聞いてしまうと俺は遥香とこれからどう進んでいくのが正解なのか分からなくなる、真実がもし俺と遥香が思っているものと違ってもそれは二人にとっての正解になるのかな