02
すぐに爆発しそうになる感情を抑えて、感情をかみ殺すように腹の奥に力を入れる
「守るも何も俺は約束なんかしてませんよ」
あの一方的な山本の話と理事長の話に首を縦に振ったことなんて覚えてない
「まぁ君がそう言うならいいけど、無茶はしないほうがいいよ、大人しくしないと君だけじゃなくて遥香にも迷惑をかけてしまうからね」
もう俺は今の言葉も、何も言えない俺自身にも、今までの発言もこんな周りくどいやり方の山本に腹が立っていた、その時怒りの言葉が俺の口から出た
「なら理事長に言わすとかじゃなくてお前の口から、俺に直接言ったらどうなんだよ」
衝動を抑えるあまり、敬語もどっか行ってしまい感情がそのまま言葉に出てしまう
「遥香を奪いたいって目的だろ」
「あはは、怖いな三上君そんな顔初めて見たよ…………でもまぁ別に奪いたいわけじゃないんだ……今はね」
「今は?」
「そうだよ今は彼女の夢を、目標を叶えてあげたいからね、だから君と遥香の中を壊そうとは本当に思ってないよ」
そして山本は小さく息を吐いた、その姿には言葉と表情は異なって見えた
「だから僕は彼女が確実に行けるように理事長に言ったんだ、まぁ部内には変な噂があったから多少の虚偽があるのは認めるよ、でも今はそうでなくてもいずれ………遥香は僕のことを選ぶよ」
何を根拠にこんなに自信満々に言っているのか分からなかった、人の気持ちは買うこともできない、なのにこんなにも自信満々な様子に、早くこの場から逃げてしまいたいのに言葉を返してしまう
「選ぶ?」
この大きく揺れている気持ちを悟られないように俺は笑って見せる、でも山本はこっちの顔なんて見向きもしなくて俺の横を通り過ぎていく
「そのうち分かるさ………それまで楽しむといいよ残された時間を」
何の根拠もない話にいらだちをお通り越して胸がズキッと痛む、山本がなんて言ったところで俺と遥香は今と何も変わらない、遥香の気持ちがこんなにも分かるのに
すると、その俺がいる場所の少し先で足音がとまる山本は振り返った、窓にあたる日がその白い肌に反射する、そしていつか見たバカにするような笑顔を俺に向けた
「遥香は渡さないよ」