12
ポツリと今の俺の心の状況を表すように空から雨が降ってきた、最近当たらない梅雨時期の天気予報が嫌になる
ベンチから腰を上げて屋根の所に行こうとするけど、この傘をさすかどうか迷うほどの雨に動けないでいた。いつもの公園で待ってるからっていうメールを遥香に送った、あんな理事長との出来事の後部活に行く時間もなく、行く余裕もなくて、まして遥香を音楽室まで迎えに行くこともできず、今のこの不安定な気持ちのまま山本になんてあってしまえばまた何か問題を起こしてあいつの思うつぼになってしまいそうでいた
「濡れちゃうよ?」
急に頭から落ちていた雨のしずくが俺の所を避けていく、何もなく公園の入り口なんか見てなくて下を向いて俺はその急に真上に現れた小さな折り畳み傘に一瞬驚いてしまった
「あー、今龍くんびっくりしてたでしょ」
目の前にはうふふと笑いながらこっちを見る遥香、いつもはこんなイタズラされたらし返してしまう小学生のような俺だけど今日は遥香の顔を見ると目頭が熱くなる、それを隠そうとするけど、そんな俺を不思議そうに見る遥香の顔を見ると抱きしめてしまう
「別に驚いてなんかないし」
背中に背負っているリュックごと俺は腕の中に遥香を閉じ込める、やっぱろこれ以上遥香から離れていくのなんか無理だった
「龍……くん?」
俺は肩越しに聞こえる遥香の声に目を閉じる、彼女の存在を確かめるようにどんなに俺が強く遥香を抱きしめてもどこからか見えない手によってこの腕の中から遥香をさらっていこうとする
さっき理事長は部屋から出るときに俺の顔をにらみながら冷たく口を開いた
「今後彼女が問題に巻き込まれたら、彼女の強化指定の推薦を取り下げることになります、もし君が本当に彼女のことを想っているならわかりますよね、関わらないことが1番なんですよ」
あの人は俺の意見なんてどうでもいいんだ、その推薦できちんと送り出せばこの学校はさらに価値を高めることができる、だから噂でもそんな小さなことでも取り除いておきたいんだ100%
「龍くん苦しいよ」
「我慢して」
俺の腕の中で苦しそうにする遥香の呼吸は少し乱れているように感じる
「今だけさ、この何秒かだけ俺のために我慢してよ」
今俺の声は少し涙声に変わってしまいそうだ、何泣こうとしているんだって自分が情けなくなるけど、そんな俺の願いを聞いてくれたように遥香はおとなしくなった、そして彼女が持っていた小さな折り畳み傘が右手からするりと落ちた