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「守る?」
そんな言葉が口から出てしまったと思う、原因は遥香じゃないって言いながら守るためなんて矛盾している、だからごまかすようにしどろもどろで言い訳を考えたけどまったく浮かんでこない
部屋の時計の音だけが響き渡る、すると突然遥香の手が俺の手に重なった
「龍くんはいつもなにか抱え込みすぎだよ」
思わぬ言葉にポカンとしてしまう
「この前の橋本さんのことも」
さらっと人の傷口に触れてくる遥香はさっきまでずっと泣いていた遥香ではなかった、いつもは鈍感で感じ取ってほしいことも鈍い癖にこんな時になぜか遥香は決まって何でも理解したような顔をする
「本当はね龍くんのことなら何でも知ってたいんだ」
「…………」
「でも龍くんがそういうなら………我慢するよ」
ぎゅっといつものように、んの口をする遥香に俺はどれだけ救われたのだろうか、いつもこの遥香の顔をみるとこんなに心がズキズキと痛むのにどうして俺はいつもこの顔をさせてしまうのだろうか?
自分でも嫌になる、自分が思っているよりも何倍も、何十倍も、何百倍も遥香を知らないうちに我慢させて傷つけてしまうようで
「ごめんな………」
そしてそのまま遥香の唇に触れる
「またその口してたよ」
「してないのに………」
あの日………
初めてはるかにキスをした日から、俺たちは何回こうやって唇を重ねたのだろうか
振れるようなキスから、息ができないくらいのキスまで
遥香は純情じゃないって聞いてから、まだ2時間くらいしかたっていないのに、その言葉が昔のように感じる、たとえあいつの言葉が嘘だとしても、山本が知ってる俺の知らない遥香が確かに存在している、そんなことを考えていたからか遥香のキスがいつもと違う気がする、まるで誘われるように合わさる唇にのめりこんでいく自分が怖い
止めたい自分と、止まりたくない自分
遥香を守りたい自分と壊したい自分
高熱に襲われてしまったような俺の脳はだんだん判断を鈍らせていく、何が正解で何が不正解か分からなくなる、そしてほほから耳へ指を滑らせると彼女の甘い吐息がかすかに漏れ出した時
さっきの山本の言葉が、さっき薄ら笑いを浮かべていたあいつの言葉が頭の中に流れた、そしてそのまま視界が狭くなる、俺は遥香を重みを感じる腕で包み込んだ、一瞬突然の行動で驚いて声もでない遥香のおびえるような表情が見えた
「俺が………怖い?」