12
なかなか返事が返ってこないからか山本は窓の方を向く
「彼女の才能はすごいよ、でもメンタルが弱いからだからそんなことで殺したくないんだよ」
「………」
「だから今日は頼みに来たんだ、彼女をそっとしてあげてよ」
なんだよそんなことかよ、学校ではあんな噂が立ってる中、あまり面識のない俺に頼みをするなんて俺が思っていたより、こいつは部活に真剣なのかもしれない
本当はいいやつかもと思った瞬間だった、その思いを180度変えさせる
「遥香はね、昔からそうなんだ、そういうところもっと成長したらすごくなるんだけど」
それは
昔からとか、もっと成長とか、そんなことじゃなくて、こいつが遥香って呼んだこと
特別な人にしか呼ばれたくないって言っていた遥香って名前
あの日、聞いてから遥香にとって特別な人は俺だけって思っていたけど、よく考えればこいつは昔の特別な人
そんな俺をさらに煽るように山本は言葉をつづける
「特にね、恋するとそういうのにのめりこんじゃうんだよ遥香は」
俺は笑うことしかできなかった
「君もたまに思わない?重いとか、めんどく感じるとき」
こいつは俺からどんな答えを待ってるんだろう、俺にとって遥香を重いとかめんどいとか感じると気なんて共感できるときなんて来ない
「いや、別に」
「………そう」
「遥香には俺がここに来たこと内緒にしてくれるかな?そんなこと聞いたらまた責任を感じてしまいそうだから」
「分かりました」
山本湊はそれだけ言うと満足そうに上品な笑顔を見せて帰っていった
「あれ、もしかして龍太あいつに惚れちゃった?」
声のしたほうを見ると、教室の窓からひょこっと顔を出す大和と潤一
「バカ、そんなことあるわけねーだろ」
「何かたくらんでそうだね」
大和は真剣な顔で俺を見る
こいつらはどこから聞いてたのか
でも二人とも俺のことで真剣な顔をしている、自分のことのように、俺のことなんか本当はどうでもいいのに、潤一もいつも冗談ばかり言うけど意外に俺のことを考えてくれてる
今までの俺ならたぶん1人で悩んでいたけど、ただそれだけなのにこいつらがいるだけでなぜか心強かった
だからかな、俺は意外にこの世界を愛してるんだ
この素晴らしい世界を