11
「そうだ、龍太今日は部活無しだって」
「なんで?」
6限の眠い地理の授業が終わって教室に戻るとき、横に歩いてきた潤一が俺に言う
「なんか、週末にバレー部が試合らしくて今日は体育館使うんだって、だから今日はオフだってよ」
「そうなんだ、なら今日は帰ろっかな」
「おう、どっか行くか」
「やだよ、眠いし今日は帰る」
そのままホームルームが終わり、教室にいた人の数も自然といなくなる、俺はロッカーから荷物を出して鞄に詰める、その時大和が俺の肩に手をポンと置いた
「龍太、お客さんだよ」
「客?」
「廊下にいるよ」
なんだ、遥香か?あまり見当のつかない俺は大和の表情が少し曇って見えたがそのまま廊下に向けて歩く、ドアに左手をかけて廊下を覗き込むとそこには窓から外の様子を眺める俺の嫌いなやつが立っていた
そいつは俺の存在に気付くとニコッと笑って小さく頭を下げた
「ちょっと、今いいかな?三上君」
はねる心臓を押えるように俺は無意識に胸に手を当てていた
部活の先輩とは違って威圧感もなくて凛として見た目以上に王子っぽい、そしてこいつが中学の時の遥香の元カレ
「ちょっと君に話したいことがあるんだ」
「…………」
「君の彼女のことで」
当たり前のように、遥香の存在が登場する、まぁ俺とこいつの接点は遥香しかないけど、分かっていたことなのにドキッとする俺の心、俺はわかりましたと淡々と進む会話の中で言う、と山本もニコッと笑う
これから俺は何を言われるのだろうか
もしかしたらここで遥香と別れろなんて言われるのだろうか?
「君は、彼女が吹奏楽に入部したことに反対かい?」
え?何言ってんだよこいつ
なんで俺が反対なんかするんだよ
遥香がやりたいってことに俺は反対なんかしない
「いや、むしろ歓迎してますけどね」
「そうだよね、なら君に頼みがあるんだ」
「………」
「彼女、フルートに集中させてあげてよ」
意味が分からない
だって俺と遥香は部活中に合わないし、見かけるとしても一方的で渡り廊下で吹奏楽部が練習するときにたまたま体育館に行くときとかでそれが集中を乱すとは思えない
「集中って、俺じゃなくて彼女次第じゃないんすか?」
山本は俺からの答えが意図を通ってないらしく優しく言う
「………うんそうなんだけど」
「………」
「でもね、彼女は君が原因で集中してないんだ」
「………」
「まぁ、本当は君と、バスケ部のマネージャーさんもね」
なんでここで、向井地の名前が出てくるんだよ
あっ思い出した、俺は数日前の向井地が俺のことを、龍くんって呼びながら遥香の目の前を走ってきたことを思い出した