01
時間は昼休みに入った12時30分を少し回ったくらい
いつもなら教室で椅子を反対に向けてスマホ片手に弁当やパンを食べている時間なのに、今日は何度目かの青空を見ながら飯を食べていた
それは昼休みに入ってすぐに大和が、今日は天気がいいから屋上で飯食べようよって言葉から始まる、でも屋上に着くと待っていたかのように大和のことを呼ぶ女子がいた
「大和君、ちょっといいかな?」
その女子はたぶん2年生で、俺と潤一は弁当は持ったまま前を歩いていた大和を見ながらその後姿を見る
「うーん、昼食べてからじゃだめ?」
「ダメ、今すぐ」
大和はくるっと回って俺たちに困ったような顔をする、俺と潤一は行けってサインを送ると、そのまま屋上の奥の柵の方に移動した
そして俺と潤一はそのイチャイチャしている姿を弁当を食べながら見ているわけで
「潤一お前さっきからガン見しすぎ」
「だって、こんなまじかで大和先生の恋愛講座が見れるなんてありえねぇだろ」
横の潤一はさっきから箸が空気をつかんではそのまま口へと運ばれる、そんなことにも気づかないまま箸を動かす潤一にあきれながら、俺は久しぶりの晴天に恵まれた空を見る、雲1つ無い空昨日まで降っていた雨のせいか今日は暑く感じる、いい加減飽きてその太陽の光がまぶしくて俺は視線を落とす
視線の先、潤一の足元にはきれいな青い袋、その袋の中には女子が好きそうなパンが入っている、最近はなぜか潤一よくここのパンを買っている気がする
「お前よくここのパン最近買ってるな」
ガン見していた潤一の視線は足元へと移る
「まぁな」
潤一がこんなパン屋とか行くなんて少し意外だった
すると、奥の方からさわやかに大和と女子が帰ってきて、大和はその女子に手を振りながら俺らのもとへと走ってくる
「ごめん俺が誘ったのに」
「あれ、大和もそのパンはまってんのかよ?」
大和の手にはさっき見た青い多いパンの袋を持っていた
「あれ、ほんとだ今もらったんだ、これ店の名前なんて読むんだろう、ここって確か駅の反対側にできたところだよね潤一?」
「おう」
「ごめん、俺さ用事思い出した、先教室に帰るわ」
何も言わないまま俺らの所から走るようにいなくなった潤一
「なんだよあいつ」
「まぁまぁ、それより龍太もこのパン食べていいよ」
「マジで」
もらったパンは2,3口ですぐに食べられてしまいそうなパン、こんなパンが最近の高校生の流行なのかね
「意外だよな、あいつがこのオシャレなパン買うとか」
「まぁね、でもそれだけじゃないかもね」
「それだけじゃないってなんだよ」
「俺も1回行ったことあるんだけどそこのアルバイトの人かな、似てるんだよ」
「似てるって誰に?」
「遥香ちゃんに」
「え?」
「顔だけじゃないんだけど、雰囲気とか、まぁ龍太もしそれが本当でもからかうなよ」
「分かってるよ」
それで、なんか今日さっきこの話をしたとたんに態度が変わったのか潤一は、前に七瀬に聞かされた、人を好きになると自分らしくなくなるって、妙にかっこつけたり、気をつかったりして気づけば自分じゃないみたいだって
俺はふと頭にうかぶ、前に大和が言っていた恋愛はめんどくさいって言葉、まぁ俺もそう思っていた、でもあの言葉は大和の嘘のような気がした
「大和も彼女作れよ」
「どうしたの急に」
「お前なら女選び放題じゃん」
「龍太変なスイッチ入ったの?今は潤一を陰ながら応援しようよ」
俺を笑うようにパンをかじる大和はやっぱりなんか前から思っていたけどどこか昔の俺に重なって見えた
「なら大和の応援はいつなんだよ?俺らができるのは」
「まぁそのうちね、龍太戻ろう」
パンの袋を丸めながら立ちあがる大和に遅れるように弁当を片付ける、やっぱり大和はどこか俺らには立ち入れない場所がある、こんなに仲良くなったつもりでも入ることのできない特別な場所
「意外とこの世界もいいもんだぜ」
階段を下りながら、前を歩く大和にぼそっとつぶやいた