05
何年だろ?
二年では見たことない顔だな……三年か?
おなじ楽譜を見ながら窓に向かってフルートを吹く、その先輩らしき人は身振り手振りで遥香にアドバイスらしきものを送っている
「大和、俺はこんなことでヤキモチはやかねーよ」
「三年の山本湊」
「ん?」
「吹奏楽部の部長、あいつには気を付けた方がいいよ」
「なんで?」
「あんまりいい噂はきかないから……」
「そうなのかよ、まぁ俺帰るわ」
そう言って大和に背を向けてドアから出ようとする
「あいつの膝見た?」
「膝?」
膝ってなんだよ、ポカンと口を開けている俺に向かって顎でもう一回見るっていうようにくいっと差した
「あいつの膝たまに、遥香ちゃんの膝にぶつけてるの気づいた?」
え?
俺はもう一度窓から音楽準備室を見る、そこには楽譜を見ながら前のめりになる山本湊は遥香の膝に自分の膝をコツンとぶつけたように見える、でもわざとやっているようには見えず、そして整った顔のせいかいやらしさも感じられない、よく言えばリズムをとっているように
「だから何?」
少しして、大和は俺の言葉にさらっと返した
「あれ、俺も使うんだよね………ねらった女子を落とすときにさ」
「え?もしかして……わざと」
「そうだよ」
「なんで?あんなことやってんだよ」
少しイラッとした俺の言葉に、優しく大和は口を開いた
「あれは山本湊の作戦だよ、ああやって膝をコツンコツンとぶつけるんだ、少しだけ触れるとさ女子は意識するんだ相手のことを」
なぜだろうか大和の言葉にはどこか説得力がある、普通なら信じない、同じことを潤一に言われてもたぶん笑って終わるだけなのに、大和の表情と声で説得力を増す
「意識ですか?」
「そうだよ、女子はさ明らかに触られると身の危険を感じるんだ、でもほんの少し触れるかどうかと言った感じだと意識するんだ」
「マジか?」
「疑うなら、龍太もやってみるといいよ」
「やってみるって……」
「まぁ最初は肩とか、ごめんで済むようなところからさ」
大和は前から少し恋愛経験値が普通の高校生より高いと思っていたが、俺の予想をはるかに超えていたみたいだ
「でも、あいつは膝だったけど」
「膝はかなり危険だ、だからあいつは慣れてる、あいつは部活というところがまたレベルが高い」
「ふーん、そんなもんなんだ」
「最初はただ触れるんだ、こっちが気にしないように自然な感じで相手に種を植え付ける、そしてこれをやめるんだ、そしたらどうなるでしょうか?」
「何とも……」
「はぁー、そしたら今度は意識するんだ女子は、今まで感じていた感触がないってそしたらまた繰り返すそうすると簡単に落ちるわけ」
「そんなもんかね?」
「まぁ、100%じゃないけどね、まぁ間違いなくあいつは遥香ちゃんにやってるよこれを」
「マジかよ、あいつ絶対ゆるさねぇ」
「あっ、またあいつやったわ」
「なに!」
「あはは、もうやめるよ、龍太って意外に沸点低いよね」
大和は俺のことをバカにするようにくすくすと笑いながら手を合わせて謝る、まぁ俺の沸点はたぶんいつもはもっと高いかな、でも遥香のことになると自然と低くなるのかもしれない
「あいつは、王子って言われてるんだよ女子の中で、絵本に出てくるようなイケメンとピアノも弾けて家は金持ちだって」
「ふーん、なぁぶっちゃけ遥香はあいつのわなにかかりそうか?お前の目から見て」
「まぁどうだろう、龍太には言いにくいんだけど………ちょっと鈍感そうだから」
鈍感って俺の彼女なのに、怒りたいけどちょっと否定できないところもある
「でも意外にそういう人が一番かかった時に抜け出せなくなるんだよ、一回スイッチが入るとさ、彼女特殊なスイッチを持ってそうだからさ」
「………」
「俺はもう帰るからせっかくのオフだし、龍太も帰ってくれ」
「おう……」
「ここのことは秘密だぞ」
そこで俺は大和と別れて久しぶりのバスケ部の部室に向かった