第14章 色をなくした花
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「龍くん………?」


振り返ると、体操服を胸の前に抱えた遥香が立っていた


「遥香………」


「ねぇ、どうしたの?」


「あ、これか怪我したんだ、でも心配すんな」


「ねぇ、なんで?」


「あー部活中にな」


「違う、そんなことじゃない!」


遥香の声が廊下に響く、廊下には一時間目のために移動教室真っ只中、行き交う人から注目をあびる


「おい、遥香みんな見てるからさ、それに次体育だろ?またあとでさ……」


「あとでじゃない、別に遅れてもいい、ねぇなんで怪我したこと言ってくれないの?」


「そんな暇がなかったっていうか、診察とかで忙しくて」


「嘘だ、今日だって井上君たちには言ってたのに………もう私がマネージャーじゃないから?、私が余計に心配してめんどくさいから?」


「違うし、ほら遅れるからさ、また昼休みにちゃんと話しよ、ね?」


「…………もう、いい」

遥香の肩に置いた俺の手を遥香は払いのけた


「待てよ」


遥香はそのまま女子更衣室の方へ走って行った、松葉杖の俺は追いつける訳なんてなくて渡り廊下から俺らのことを見ていた潤一と大和の所に行くのが精いっぱいだった



「てかさ、お前ら二人って本当にラブラブだよねー」


「なんで?さっき見てたろ」


化学の授業中、実験のグループが同じ大和はフラスコを洗いながら話しかけてくる


「いやだって、二人とも相手のこと思ってのけんかじゃん、遥香ちゃんは龍のことを心配して、で龍太は遥香ちゃんに心配させないようにした結果がそうなってさ、龍太も言えばよかったじゃん心配させたくなかったからって」


「そうだけどさ、いざ俺も遥香の立場なら絶対に言ってほしいって思いそうだからさ、でも今フルートに集中してほしんだ、遥香が選んだ道だからさ」


「ふーん、まぁこの使い終わったマッチみたいに燃えてなくならないようにね」


大和は持っていたマッチで火をつけるとふっと息をかけて火を消して、空き缶の中に入れた、そのマッチは少しだけ赤く燃えるとだんだん黒くなっていき燃えカスのように消えていった




ライト ( 2016/04/27(水) 17:27 )