05
日が暮れていく、時間はもう7時を超えていていつもより少し早く終わった部活、学校から駅までの通学路急に龍くんがとまる
「マジで?吹奏楽?」
「なんで、そんなに驚くの?」
「いやだって、俺ずっとバスケやってたんだと思って」
「うん、中学は吹奏楽部だったの」
「で、遥香はどうしたいの?」
横から聞こえた龍くんの声はいつもと変わらない、そんな質問がくることは分かっていたのに答えを用意できていなかった
だけど、龍くんにバスケ部にいろって言われたらすぐに私の返事はイエスになるのに
「うん、よくわからないの」
「分からないって、遥香次第だよ」
今私の中にあるのは龍くんと放課後に合えるかどうか
「うん、やりたい気持ちもあるんだけど………」
「…………」
次の言葉を待つような龍くんの視線が私に刺さる
「だったら、龍くんが決めてもいいよ」
「は?」
あっ私何言ってんだろ、その気の抜けた後には、そんなの自分で決めろって怒られるんだろうな、でも龍くんの口から出た言葉は意外な言葉だった
「よーし、なら俺が決めてやるよ」
「え!」
龍くんはいたずらっぽく私に笑いかけるとポケットに手を突っ込んだ
「もうこれは、神様次第だ選べ」
龍くんは両手をグーの形にして私の前に出した
「選べって?」
「どっちかに100円がはいってるから、入ってたら吹奏楽部に行け、入ってなかったら今まで通りバスケ部だ」
「え!そんな簡単に?」
「そんな簡単にって、お前俺に選べって言ったじゃん」
まぁ確かにそうです、私が言ったので何も言えません、私は龍くんの両手を真剣に見る、右かな?左かな?
よし、私は片方の手を指さした
「こっちだな?」
「うん」
龍くんの手はゆっくりと開かれた
「あ………」
その手には100円が乗っていた
やっぱり喜べないし、訪れたのはがっかりした気持ち、こんな気持ちになるのなら自分で選べばよかったって今さらながら思ってしまう、だから龍くんへの笑顔もひきつってしまう、そんな笑顔をみながら龍くんはクススと横で笑う
「今のなかったことにする?」
「いい」
「本当に?」
やだ………
「うん」
本当は嫌だ
「本当はどっちだよ?」
「え?」
「顔がうんって言ってないんだけど」
「そんなことないよ、ただ少し心配なだけ吹いてなかったからちゃんと吹けるかどうか」
あ………間に合わない
私の目から涙がポロリポロリと流れた
こんなところでなんで泣いてるんだろう私、龍くんに迷惑かけてるよねここは通学路だからさっきから高校生が歩いているしたぶん面倒くさいって思われてるよね
でも涙が止まらない
「あー、なんか俺部活で疲れたからベンチ座っていい?」
龍くんは私の返事を聞くこともなく私の右手を引っ張って駅の近くにある公園のベンチに座らせ私のほほを伝う涙をすくう、こうやっていつも涙を拭いてくれるから私はどんどん泣き虫になっている気がする
「もしかして、その涙は俺のこと?」
「え?」
「遥香は俺と離れるのがいやか?」
「どうしてそう思うの?」
私は龍くんの顔が見れない、あんなに振り回しておいてさらに迷惑をかけるなんて
「遥香のことなら何でも分かるから、だから………俺も辛い」
「辛い?」
辛いって言葉が心にささる、こんなにも痛むんだ好きな人から出る辛いが
「ごめんね、龍くん私めんどいでしょ?それに、重いし、一緒にいて恥ずかしいよね?小学生みたいに泣くし、それに……」
「もう何も言うな」
龍くんの唇が私の唇に触れる、それだけで私の勢いはなくなる
「俺はさ、遥香とクラスが離れて以外によかったと思ってるよ」
「え?なんで?」
「廊下から見えた遥香とか、食堂で見た遥香とか、授業中に見える校庭で体育してる姿とか見て、遥香のことがもっとしれた気がした、まぁそんなことしてたら潤一とか大和とかにはストーカーって言われてるけど」
嘘!龍くんが私を……
「そしたらさ」
「…………」
「遥香のことが今までの何倍も好きになった、だからもう迷うなお前はさっきの様子見てたら吹奏楽やりたいって顔してたよ」
「離れても大丈夫かな?」
「大丈夫、それに離れたら遥香は俺のこともっと好きになるな」
「それは無理」
「あれ?即答すか?」
「だって、私の中でもう目いっぱいだもん」
「目いっぱいって、まだまだ甘いな」
龍くんはニヤッと笑った
「甘いって、これ以上好きになったらどう責任とってくれるの?」
「責任って言うならとってやるよ、言葉での責任が欲しいなら結婚するか?、体で責任とってほしいなら今からでもしてあげよっか?」
「いや、いい、いいから」
「いいの?責任とらなくても」
真っ赤な顔になってるであろう私の顔とその姿を見てまた笑う龍くん
私の斜め上から聞こえてくる優しい声と視線、私たちはどんなに分かれ道に言ったとしても出口では必ず会えると思うんだ