元不良見習いの奮闘記







































小説トップ
第27章 大人への決意
沈むだけ
高松「なぁ、聞いたか?」
平手「うん。愛佳の卒業は、聞いてたよ。とても苦しそうだったよ。」
高松「そうか・・・」
平手の見舞いに来ている。
一応順調に治療は進んでいるらしく、病状も落ち着いている。
平手「高松、悲しいの?」
高松「まぁ、うん。そうだな。女の怒りの顔を見たことあるけど、あんな苦しそうで悲しそうな顔を見るとな。」
平手「私もあんな顔してなかったの?」
高松「お前はなんというか、悲しいよりも悩んでいるって顔だったと思う。それに比べたら志田さんは、すげぇ苦しそうだったなって。」
平手「あ〜、そっか〜。」
高松「・・・」
平手「高松?」
高松「ん?」
平手「最近どうしたの?ずっと暗いよ?」
高松「あぁ、すまん。店のこともあって色々考えているんだよ。」
平手「そうなんだ。」
考えているのは本当だが、店ではなく俺自身のことだ。
平手は筋を通しているが、俺はどうだろうか。
そう考えると、俺は筋は通していないと思う。
平手「高松。」
高松「ん?」
平手「どこにも行かないでね。」
高松「・・・え?」
平手「今の高松を見ていると、遠くに行っちゃいそう感じがしちゃうの。」
高松「俺は、どこにも行かねぇーよ。それに俺の居場所は、紺色屋だ。それは変わらない事実だ。」
平手「ならいいんだけど・・・」
高松「・・・」
また黙ってしまう。
本当にどうしようもない。
平手「高松・・・隠していること言ってよ。それが高松の・・・」
高松「言えねぇーって言ってるだろ。すまないが、見舞いの時間は終わりだから、帰るぞ。」
平手「あ、ちょっと・・・」
平手は手を伸ばしたが、高松の背中は遠くに感じていた。
平手は本当に高松が、消えてしまうんじゃないかと感じた。
〜〜〜〜
西野の部屋
高松「・・・」
西野「寛太?」
高松「ん?」
西野「体調悪いん?」
高松「いや、そんなことはないぞ。どうしてだ?」
西野「なんか、ずっと暗いで。それに何考えているん?」
高松「何もないし、大丈夫だ。」
西野「なら、ええねんけどな。」
久々に七瀬さんの部屋に来た。
七瀬さんは、今撮っているドラマで忙しく、今日はたまたま休みになったから、俺が呼ばれた。
また明日から撮るらしいけどな。
高松「・・・」
西野「寛太、ほんまに大丈夫なん?」
高松「大丈夫だって。どっからどう見ても元気だろ?」
西野「いや、何かを隠していることしかわからんわ。」
高松「・・・」
言えることなら、すぐに言っている。
そろそろ距離を置くように言うべきか。
西野「ほら、寛太。こっちおいで。」
高松「ん?」
七瀬さんは、ぽんぽんと膝の上を叩いている。
高松「はいはい。」
俺は、そのまま膝の上で寝る。
西野「・・・」
高松「・・・」
静かな時間が流れる。
幻聴は何処へやら。
西野「寛太・・・」
高松「なんだ?」
西野「離れないでね。」
高松「離れませんよ。」
西野も高松が、どこかへ遠くへ行く感じをしているんだろう。
西野は、高松は目に見えないものと戦っているのもわかっている。
だが、それは入っていいものなのかわからない。
そのまま夜が明けて、2人は仕事に戻る。
高松の感情は、沈み続けている。

満腹定食 ( 2022/01/14(金) 09:29 )