新人警察官は駆け上がる





































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番外編 その2 パラレルワールド
寺田蘭世の場合
寺田「どう?」
津田「ん〜、似合いますかね?」
寺田「見せてよ〜。」
津田「行きますよ。ほい。」
寺田「おぉ〜、似合っているよ!」
津田「ほんまっすか?」
寺田「うん!」
寺田に連れられて、古着屋に来ている。
俺は、バイカーなのでそんな感じの服しか持っていないため、寺田に連れられてきた。
寺田「やっぱり、津田さんはストリート系は似合うんだね。」
津田「そうっすか?そんな感じの服は、着ないんであんま、わかんないっす。」
寺田「めっちゃ似合ってるよ。」
津田「それなら、買おうかな。」
寺田「それだったら、もう一回選ばせてよ。」
津田「いいっすよ。寺田さんにお任せします。」
寺田「ん〜、そうだな〜。」
本当に服が好きで、センスがいいんだなって思う。
乃木坂内でも、スタイルはいいし、それに服のセンスがめちゃくちゃいい。
ど素人の俺からしても、おしゃれだとわかるレベルだ。
津田「・・・あの。」
寺田「何?」
津田「ほんまに卒業しちゃうんすか?」
寺田「うん、決めたことだから。」
ハンガーの金属の部分とラックの部分が当たる音が響く。
寺田さんは、乃木坂を卒業する。
それもあと少しで。
寺田さんと一緒に過ごしていくうちに、その気持ちを聞いたときは、ショックを受けた。
まだできると思っていたのに。
それなのに。
寺田「ねぇ、悲しまないって約束だったじゃん?」
津田「そうですけど、悲しいですよ。またアンダーでセンターに選ばれて、これから選抜に戻るって感じだったのに。」
寺田さんには、本当に色々考えさせられた。
こんな、ダンスも歌もいいのに選抜に選ばれない。
それにメディアにも出れない。
それを見てから、俺は会社に入って走り回った。
その回もあってか、ちょびちょびテレビやラジオに出て行けるようになった。
自己満だと思われているが、俺なりの恩返しだと思っている。
乃木坂には、こんなすごいメンバーがいるんだって。
津田「・・・」
寺田「ねぇ、私からもいい?」
津田「はい?」
寺田「なんで、私を選んだの?橋本さんや西野さん達がいたのに。」
津田「ん〜、それは、あのときから決めていましたよ。」
寺田「一緒にお酒飲んだ時?」
津田「えぇ、橋本さんと一緒に過ごした時間は、長いですけど、あの時のことを忘れられなくて。」
寺田「実家に帰った時も?」
津田「えぇ、ずっと寺田さんのことを考えてましたよ。帰ってたから、寺田さんをもっと世間の人に知ってもらおうと思ってました。」
寺田「でも、会社にはいるから、安心してよ。」
津田「それは、どうですかね?いきなりどっか行きそうな感じがしますけどね。」
寺田「そのときは、どうするの?」
津田「もちろん、一緒について行きますよ。寺田さんのためなら、身体が壊れるまで働きますよ。」
寺田「それは、やめてほしいな〜。」
津田「あはは、でもそれくらいの覚悟でついて行きますよ。」
寺田「ありがとう。これは?」
津田「えぇ〜、似合います?」
寺田「さっきみたいに来てみてよ〜。」
津田「わかりました。なんなりと。」
こうやって過ごしていく間も、乃木坂の寺田は一歩ずつ卒業へ歩んでいる。
俺は、最後まで見届けよう。
彼女が乃木坂ではなくなる瞬間を。

満腹定食 ( 2021/09/26(日) 23:10 )