第2章
03
イベントも終わり、鷹斗はまだ心臓がバクバクしていた。まだ微かに杉原の手の感触が残っていた。大好きな杉原杏璃と握手も出来た。本当に夢の様な話だ。

(こんな偶然に偶然が重なるなんて…時間が経つのがあっという間やったな。サイン入りの新作までゲット出来て握手も出来て…幸せ。さあて、これからどうしよかなぁ…ホテルでも泊まるか。明日まで母さん居ないし…けど、そう簡単には泊まれないか。)

鷹斗は一件のホテルへ向かった。実は前から気になっていたホテルだった。

「今日ですか?ちょっと待って下さい。」

予約も何もしてない鷹斗は、行き当たりバッタリでフロントの人に聞いた。事前準備なんか全くしていなかった。

「申し訳ありません。空いてる部屋はございません。」
「そうですか…」
「あの、もしお客様が宜しければ、相部屋が一つだけありますが…」
「あ…相部屋?」
「お客様が宜しければの話ですけど。」
「相部屋…わかりました。大丈夫です。」
「よろしいですか?では、ご案内します。」

空いてる部屋は無かったが、相部屋になった。だが、鷹斗はイマイチ相部屋の意味がわかっていなかった。

(曖昧なんだけどさ…誰かと一緒の部屋って事だろ。男の人なら良いんだけど、女性だったらなぁ…てか、男性もあれか、俺は良くても向こうがあかん場合もあるし…いや、今案内してもらってるって事は、向こうは了承済みって事か。一体誰なんだ?)
「お客様、こちらでございます。相手方さんはまだ帰られてませんので、もう少々お待ちください。」
「わかりました、案内ありがとうございます。」

鷹斗は部屋に入った。相手はまだホテルに帰って来てないようだ。

(荷物あるけど、判断出来ないな。)

その後数分経ったが、まだ相手方は帰って来てない。何処かで食べに行ってるのだろうか?

(腹減ったなぁ…先にどっか食べに行けば良かった。向こう方が来たら、コンビニでも行くか。)

と、考えていると…部屋の鍵が開いた。そして…

「え…?」
「あ…君は確か、え…」

鷹斗は口があんぐり、相部屋の相手とは一体?

夜明け前 ( 2018/12/08(土) 17:38 )