第5章
06
「美桜ー、美桜ー。」

優希は美桜の部屋の前に着き、美桜の名前を呼んだ。親友・悠太からの助言をもらい、ずっと立ち止まっててもいけないと思い、意を決して謝る事に決めた。

「美桜ー、あれ?」
(全く返事がない。部屋にいない?それともまだ怒ってる?)

部屋からは何も聞こえない。美桜がいるのは確信ではないが、いるに違いない。だが、美桜の部屋は物静かだった。

(入ってみるか。)
「美桜、入るぞ。」

返事はなかったが、優希は美桜の部屋に入った。と…

「美桜?」
「Zzz……」
(寝てる…それも布団も被らず。)

外は寒かったが、日差しは暖かく美桜はベッドで寝ていた。おそらく、ウトウトしてそのまま寝てしまったのだろう…

「風邪ひくだろ…ま、仕方ないか。」

優希はぼそっと呟くと、美桜に布団を被せベッドに座った。

「美桜、ごめんな。」

寝ている美桜の髪を撫でながら優希は謝った。相変わらず美桜は気持ちよさそうに寝ていた。

(やっぱ美桜が一番可愛いな。彼女だから…いや、好きだからかな。)

美桜の寝顔はすごく可愛かった。初詣帰りはムスッと頬が膨れていたが、寝ている姿はいつもの美桜だった。

(幸せそう…)
「んん…ん〜?あ…優ちゃん。」
「美桜、起きちゃったか?悪い。」
「ううん…私、いつのまにか寝てたね。」

美桜は目を覚ました。だが、目はまだ重たそうだった。

「美桜、さっきはごめんな。」
「ううん…私こそあんなんで、膨れちゃってごめん。つい顔に出ちゃった…」
「許してくれる?」
「うん。優ちゃん…」

美桜は優希の首に腕を回すとキスをした。優希は突然でびっくりしたが、すぐに美桜の気持ちを汲み取った。

(ほんとは俺と家帰ってからしたかったんだ。いや…初詣の帰り道でしたかったけど、俺が芽瑠ちゃんとかを見惚れてたから拗ねちゃって、結局出来なかったんだな。美桜…ほんとごめん。)

心の中でも謝ると優希もキスをした。

「んふふ…まだ1回もしてなかったね。優ちゃん…」
「ほんとは俺と…」
「うん…でも、元日からキス出来たね、優ちゃん。」
「ほんとごめんな。」
「優ちゃん…家お父さん達いないよね?」
「旅行行くって言ってたな。」
「ねぇ…新年1回目の“アレ”する?」
「ああ。美桜…」
「んふふ…優ちゃん、好きだよ。」

優希は美桜と仲直り出来た。まぁ…始めから優希がすぐに謝ればここまで引っ張ることはなかった。だが、優希の性格だから仕方ない。とにかく、優希よかったな!

夜明け前 ( 2017/12/12(火) 17:35 )