第4章
02
その後優希らはしめ縄を付けるのに、時間を要していた。

「お父さーん、これはここでいいの?」
「うーんとな、こっちだな。」
「優希君、手伝ってもらってありがとね。」
「いえいえ、泊まりに来てるならこれくらいは。」
(しかし…外は寒い。こんな寒かったかな…あったかくならないかな…あったかく…ああ、そういや夏休みからだよな。美桜と付き合ったの…きっかけってなんだったかな…)
「ねぇ優ちゃん、福岡行かない?」
「福岡?なんでさ?」
「美桜って知らない?」
「みお?みお…ああ、朝長か?」

きっかけは夏休み前のとある日、咲良からの誘いだった。既に優希より先に付き合ってた悠太・麻友以外のメンバーが、福岡に行くことになった。ちなみに、この時はまだ真央・隆史は参加していない。

「着いたー、福岡ー!」
「優希、どっちが先に付き合うか勝負だ。」
「勝手にしろよ、全くお前はそれだけのために来たんだろ?」

この福岡旅行が恋愛解禁してから、最初の旅行だった。

「なぁ優希、美桜ちゃんってどんな子なんだ?」
「どんな子って…久々だから覚えてないんだよな…」

そして美桜と合流し旅館に着いた。そこで優希の人生を左右する選択があった。

(そうだ、着いて早々愛佳に告白されたんだよ。ん?告白というか、思いを伝えられたというか…で、美桜が聞いてたんだよな。)
「私は…優希じゃないと嫌なの。」
「愛佳の気持ちはよくわかった。けど、その後みんなと会わす顔が…」
「そっか…うん。優希、旅行の後でいいから。」

別の場所で愛佳から思いを伝えられ、戻って来ると美桜が重い口を開けた。

「優希…多田さんと付き合うの?」
「美桜…聞いてたのか?」
「うん…」
「優ちゃん、付き合うって…」
「咲良すまねえ、これは俺ら3人の内緒でいいか?」
「うん、優ちゃん任せて。」

その後咲良は優希の相談相手となった。

(相談相手って言いながら、咲良に相談全くしてなかったな、まぁその咲良も尚と付き合ったわけだし。その2日後だったな、美桜に決めたの。ほんと苦渋の決断だったな。)
「美桜…よろしく。」
「え…私でいいの?」
「ああ。愛佳すまない。」
「いいよ、その代わり美桜ちゃん悲しませたら、私が許さないから。」
「わかってるよ愛佳、絶対悲しませたりしないよ。」

今も思うが、よっぽど優希のことが好きだったに違いない。だが、優希は美桜を選んだ。辛かったかもしれないが、あの時の愛佳に涙はなかった。

「優希…よろしくね。不甲斐ないけど。」
「いいさ、俺だって同じだし。」
「優希…キスしよ?」
「ああ。」
(ほんと付き合うとは思わなかったもんな、俺が一度フった子と付き合うなんてさ。)
「優ちゃん?」
「え…」
「手止まってない?」
「ああ悪りぃ。」
「またこの1年思い返してたの?」
「まあな、美桜と付き合ったのどんなきっかけだったかなって…」
「そんなの…ああなってこうなったじゃん。」
「なんだよそれ…まぁいいか。」

優希はまた手を動かした。

夜明け前 ( 2017/11/20(月) 13:22 )