第3章
05
「優ちゃんあーん…」
「うん、美味いな。はい、美桜。」
「う〜ん…美味しい。」

優希と美桜はレストランで食事をしていた。それも夜景が見える場所だ。

「優ちゃんありがとー。こんな景色が見えるとこで食べることなんて、初めてだから。」
「俺もそうだよ。混んでそうに見えたけど、そんなにいなかったな。」
「うん。」

そのレストランはかなり人気のレストランだった。優希は全く知らなかったが、美桜はどこからかその情報を手に入れた。たまたまこの店近くを通ったため、ここで食事をしているのだ。

「高そうなイメージだったけど、それほどだったね。」
「これでこの値段なら文句ないな。」
「優ちゃん、私が言わなかったら、この店知らずに生きてくとこだったね。」
「何だよその言い方。」
「じゃ、店出よか。私が出すから。」
「いいよ、俺が出すから。」
「優ちゃんばっかだーめ、たまには彼女の私が出すのもいいでしょ?」
「そうか?なら、お願いしよかな。」

というわけで、会計は美桜が済ませ店を出ようとした。

「美味しかった。」
「ほんとだな。」
「お客様ー、お客様ー。」
「ん…美桜、お前呼んでないか?」
「私?」
「お客様、お忘れ物を。」
「あ…」

忘れ物とは…

「危ない危ない。」
「はぁ…お前が楽しみにしてるのを、普通に忘れるとはね。」
「あの店員さん優しかったね。」
「言ってる場合か、他に忘れ物してないよな?」
「大丈夫だって。多分…」
「いっか。」

お気付きだと思うが、美桜が忘れかけそうになったのは、サンタコス。始めから着てないので、ずっと持っていた。

「優ちゃん、なんか今日の夜は一番長い気がする…」
「何で?」
「だってさ、1年に1回しかこういうこと出来ないんだもん。絶対長いに決まってる。」
「今はそうかもしれないけど、終わったらあっという間だよ。楽しみにしてる時こそ、あっという間に終わるんだよ。」
「あっという間か…そうかもね。優ちゃん…」
「何だ?」
「私は優ちゃんとずーっと一緒にいたい。あっという間の幸せなんかいらない。」
「ああ。それは俺も同じだよ。美桜とずっといたいさ。」
「優ちゃん…行こ?優ちゃんと長ーい夜迎えたいな…」
「わかったよ、部屋入ったらすぐ着替えるんだろ?」
「うん。優ちゃん覗かないでよ?」
「俺は覗き魔じゃねえよ。」

2人はそう言いながら、例の場所へ向かった。これから、2人の長〜い夜が始まろうとしていた。

夜明け前 ( 2017/10/25(水) 17:53 )