第2章
09
「優希楽しんでるかな…」
「つまらない訳ないじゃん。優希君結構ウキウキしてたし…」
「だな。あいつ、クリスマス何すんだろな。」
「デートするんじゃない?私達もデートだけどさ。」

この日、悠太と麻友は福岡旅行満喫中の優希のことを話してた。

「しかしさ、俺らより後に付き合ったけどさ、やってることは俺ら以上のことしてるもんな。やっぱ優希凄いや。」
「確か優希君って昔付き合ってたんだよね?」
「ああ。数ヶ月ぐらいだったと思うけど…でも、うん…俺羨ましかったんだよね。」
「悠太より一歩も二歩も先に行ってたんだもんね。」
「それもそうなんだけどさ…」
「他に何かあるの?」

麻友は首を傾げた。もっと羨ましかったのは何なのか?

「俺さ、中学の時誰とも付き合わなかったからさ。あいつとはよく一緒にいたけど、何かあいつとは違うんだよ。」
「悠太も結構モテそうだけどね。」
「俺もそうだと思ってた、『楽しい中学生活送れるんだろうな。』って。だけど違った。声かけられるのは優希だけ、俺にはなかった。」
「一回も?」
「うん。」

悠太の夢は現実とは違った。付き合う以前の問題だった。

「だからさ、優希より先に付き合ったけど、正直右も左もわからんかった。あいつには『お先。』とか、『早よ付き合えよ。』とか言ったけど、言える立場じゃないんだなって…」
「そっか。でも、それが悠太なんじゃない?」
「え…」
「悠太は優希君じゃないし、優希君は悠太じゃない。悠太らしさを出せばいいんだよ。」
「俺らしさ…か。」
「うん。だから、優希君にはないものが悠太にはあるかもしれないじゃん。」
「確かにそうかもな。俺にはないやつは、優希にあるし…そうだな。なあ麻友。」
「何?」
「麻友をよく知ってるのは愛佳ちゃんの次だよね?愛佳ちゃんには負けるけど。」
「そうだけど、私をよく知ってるのはお父さんとお母さん。次にらぶたんでその後悠太。悠太は4番目。」
「そう…だね。」

麻友の親の存在を忘れていた悠太はちょいと落ち込んだ。それも悠太らしいのかもしれない。

「さ、悠太行こ?クリスマスの時に着る服買うから。」
「俺もだよね?」
「当たり前でしょ?」

悠太と麻友は服を買いに出発した。美桜みたいにサンタの服は買うのだろうか?

夜明け前 ( 2017/10/10(火) 21:19 )