06
「ただいま。」
「優ちゃんおかえり。遅くなかった?」
美桜の家に戻ると美桜がいた。だが、美桜の両親は見当たらない。
「お父さんとお母さん今仕事に行ったの。出張だってさ。」
「この時間からか…」
「突発だって。それより優ちゃん、どこ行ってたの?」
「ん?お前の妹ちゃんらの家にね。」
「え?奈子と美久の家?」
美桜は驚きのあまり、声が裏返った。
「そうだよ。たまたま出掛けてたら会ってさ、そのまま家にね。」
「そんな〜…私は会ってないのに、優ちゃんは2回も会ったのか。羨ましい…」
「ほんで、これ貰ってきた。」
そう言うと優希は美久から貰った例の物を出した。
「それ…え?何で優ちゃん持ってるの?」
「美久ちゃんだったかな…『これ、お姉ちゃんの服です。』って。こういうの好きなんだな。」
「優ちゃん…」
恥ずかしい過去を知られてしまった。間違いではない。だが、彼氏には内緒にしておきたかった。
「でも、何で優ちゃんそんなこと…」
「あの2人がこんなのに着替えてさ、『お兄さんどうですか?』って言うからさ、始め『何してんの?』って思ったけど、後で2人から聞いたんだよ。お前が、部長だったって聞いたし…」
「うう…」
「で、帰りに貰った。」
「恥ずかしい…」
「クリスマスサンタの格好でもいいけど、これもありだよな…」
「優ちゃん嫌だよ、クリスマスはサンタの格好。」
「なら、今からこれ着てよ。」
「え…」
「俺、美桜がこんなのを着るイメージなかったし、どんな感じになるのか見てみたいし…」
「うう…」
「それが嫌なら、クリスマスデートの日に着るか、正月に着るか。」
「正月って…わかった、今から着る。」
「楽しみだな…親いないのが幸いだね。」
「他人事みたいに…優ちゃんの意地悪。」
「そう怒んなよ。」
というわけで、美桜は着替えに行った。その頃、親と大喧嘩した尚はというと…あの後、1人で公園にいた。
(何でだめなんだよ…あんな2人親じゃねえ。最低な大人だ、何で…何で…)
「尚君?」
「さ…咲良ちゃん…」
「こんな時間に…」
「俺…間違ってるかな…」
尚は咲良に会った瞬間、堪えきれず泣いてしまった。咲良は直ぐに駆け寄った。
「尚君…話は私の家で聞くよ。」
「うん…」
一体何があったかわからないが、咲良は初めて彼氏が泣き崩れる姿を目撃してしまった。