第2章
02
そして夕方、美桜達が帰って来た。

「ただいま、留守番ありがとね。」
「すごい暇…」
「優希君助かったよ、美桜の部屋でゆっくりして来な。美桜もありがとな。」
「うん。優ちゃん行こ?」

親の前でも自分のことを『優ちゃん』と呼んでるが、優希は気にしていない。実は美桜の両親から…

「優希君となら結婚しても許す。」
「ほんと?」

先日、そんな話になったのだが、その時に美桜が親の前に『優ちゃん』と呼んだのだ。優希は焦ったが、美桜の両親は笑っていた。

「ほんと2人は仲良しだな。」

ちょっと恥ずかしかったが、隠してても無駄だと思った。美桜も美音と同じで口が緩い方かもしれない。そんなことより、優希は美桜の部屋に入ると、ベッドに寛いだ。

「ちょっと優ちゃん、私のベッドなんだけど…」
「美桜もするじゃねえか。お互い様だろ?」
「私はいいけど、優ちゃんはだめ。」
「なんでだよ…」
「冗談だよ優ちゃん、あれ?この服と教科書…」
「ああ、それ昼だったかなぁ…美桜のこと『お姉ちゃん』って言う子が来て…」
「美久と奈子か。」
「みくとなこ?」
(誰だ?)

聞いたことない名前に優希は首を傾げた。傾げたところでわかる筈もないが。

「なあ美桜、そのみくとなこって?」
「あれ?名前言わなかったの?矢吹奈子と田中美久、私が通ってた学校の後輩なの。可愛いんだ。」
(美桜の後輩か。)
「どっちがどっちかわかんないけど、『お姉ちゃんに渡してください。』って言われたから、机に置いといた。美桜って1人っこだっけ?」
「うん。」
「2人とも『お姉ちゃん』って言うから、美桜って兄弟いたっけって…」
「もしかして留守番中、ずっと考えてたの?」
「帰ってから聞こって思ったんだけど、気になって気になって…」
「優ちゃんらしい。」
「そうか?でも、2人とも確かに可愛かった。」
「でしょ〜?まさか優ちゃん、浮気は…」
「するか!俺は美桜が一番可愛いと思ってるから。」
「ほんとに〜?なんか慌ててる気がするけど…」
「気のせいだって、な…なんだよ。」
「いいや、それも優ちゃんらしいし…」
「なんか全然嬉しくない。」

許してもらったのか、中途半端な感じがした。一方、昼に美桜の家にやって来た奈子と美久は電話をしていた。

《もしもし奈子ちゃん?》
「みくりんどうしたの?」
《今日お姉ちゃんの家行った?》
「行ったよ。お姉ちゃんはいなかったけど、お姉ちゃんの彼氏さんがいた。」
《やっぱり、そうだよね。お姉ちゃん、私達に『彼氏?彼氏いないよ。』って言ってたけど、今日行ったらまさかの彼氏さんと…》
「ねぇ、お姉ちゃんの彼氏さん…かっこよかったよね?」
《うんうん。美久ああいう人が彼氏だったらいいなぁ…》
「わかる〜。でも、お姉ちゃん私達に嘘ついたよ?」
《独り占めしたかったんだよ。ねぇ、次もお姉ちゃんがいない日を選ぼ?で、私達のお兄ちゃんになってもらお?》
「賛成。じゃあ、みくりんまたね。」

なんやら、恐ろしい計画を立てた2人であった。

■筆者メッセージ
美桜ちゃんを『お姉ちゃん』と呼んでたのは、なこみくの2人でした。
夜明け前 ( 2017/09/23(土) 17:48 )